きっと其の二十二 ページ22
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_____矢ッ張りお前、俺ン所来い。
先程から中原幹部の声が何度も脳内を反芻していた。
お陰でこれが、何度目の寝返りか判らない。
あの場では保留にしたが、一体どうしたものか。
幹部直々にお誘いいただけたことは勿論嬉しかった。嬉しいの前に恐れ多すぎたが。
然し、私にとって、これまで共に戦ってきた黒蜥蜴の仲間はすごく大切である。
黒蜥蜴を離れることを考えると、何だかとても名残惜しく、同時に寂しさが滲んだ。
兎に角、明日こそは実地任務だし、今日の所は早く寝ようと瞼を閉じる。
少しすると、さっきまでの時間が嘘のようにAはあっという間に眠りについてしまった。
______ねえ、ほら、起きてったら。
お茶会に遅れてしまうよ。______
「……お茶会…?」
ふんわりと淡くぼやけた視界にいるのは、白い兎とニヤニヤ怪しく笑う猫。
(嗚呼…夢を見ているのか……) Aはすぐに状況を理解した。
何時まで呆けているのさ、"アリス"______
______行くよ、"アリス"。"彼"も待ってる。
(…不思議の国のアリス、か……?何でこんな夢……)
______……嗚呼、もう駄目みたいだ。"アリス"。
"スペィドの女王"が来ちゃったよ。______
("スペィドの女王"?アリスに出てくるのは"ハートの女王"じゃなかったっけ?)
"アリス"、最期に1つだけ聞いてね______
______これはきっと、"アリス"にしか判らない。
ワタシの素敵な"アリス"。君の世界は既に狂いだしているよ。______
______可哀想なボクの"アリス"。歯車が壊れる前に何とかしないと。
「何云ってるの…?抑々、私は"アリス"じゃない」
何が何だかさっぱりだ。本当に不思議の国へ迷い込んでしまったように錯覚するほど、わけが判らない。
黒い煙が兎と猫を連れ去るように覆い始めた。小さな2匹はあっという間に呑み込まれていく。
最後に、2匹が声を重ねて云った。
___大変!もうハンプティが壊れそう!!___
一際大きく響いたその声が急激に恐怖を掻き立て、Aは飛び起きた。
一瞬、自分が何をしていたか判らなくなる。数秒空いてから夢を見ていた事に気付き、再び布団へ倒れ込んだ。まだ時刻は4時30分である。
その後2度寝に成功したAだが、もう兎と猫は現れなかった。
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時