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きっと其の二十一 ページ21

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「そりゃ良かったな」
「良かったのかな……毒も入ってなかったみたいだし」
「お前、俺を毒味に使いやがったな?!」

自分も口へ1つ放り込むと香ばしいバターの味が口に広がる。中々に美味い。目の前の立原も同じように感じているらしく、次々と口へ放り込んでいた。
これだけ食べて何もなければ大丈夫だろう。

今日は今のところ出動命令も無く、書類整理が主な業務内容なので、割と皆寛いでいる。
Aも先程すべて提出したので机の上は片付いた。

「撃ちにでも行こうかな」
「お、じゃあ俺も行く」

射撃場へ行くと、其処は閑散としていた。数メートル先にある標的(ターゲット)だけが真っ直ぐ2人を見つめている。

と、思ったのだが。


「お、A!と、立原」

扉のドアノブを握っていたのは中原だった。

「中原幹部…お疲れ様です」
「"と"って何ですか"と"って‼」
「特に深い意味はねえよ、五月蝿えな」

いつも通り立原の扱いは雑である。

任務以来顔を合わせていなかった中原の登場に少し嬉しく思うAがいた。
だが、彼女はまだその感情に名前を付けずにいる。気づいているはずでも尚、だ。

「つーか幹部、Aのこと名前で呼んでましたっけ?」
「あー、呼んでた呼んでた」

適当に返した幹部は立原の横をすり抜け、斜め後ろに居た私の元へと来た。
一瞬だけ視線を足元に降ろしていた散弾銃(ショットガン)へ目を向け、また私へ戻す。
元々人と目を合わせることが苦手な私は、反射的に足元の得物へ視線を落とした。

直後「おい、A」と名前を呼ばれ、結局視線を戻すことになる。

「撃ってみせてくれ」
「あ、はい」

云われるがままに得物を構え、数メートル先へ照準を合わせる。そして、発射。

『構えてから発射までの流れはおよそ2秒以内にこなせ』これはAが自身に課している掟であった。
本人は判っていないが、その速さは組織全体とはいかなくとも、黒蜥蜴内では有名であり、頼りにされている。

弾丸は見事に中央へ命中し、Aは安堵の息を漏らした。それから、横に佇む中原の様子を伺う。
彼は一瞬だけ薄い笑みを浮かべてAに向き直った。その目はどこか真剣味を帯びている。


「矢ッ張りお前、俺ン所来い」


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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時

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