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きっと其の十二 ページ12

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「俺らに楯突いた輩がどうなるか…知らねえわけねえよなァ?」


中原幹部が私の背後を睨みつけた。
その殺気に、私まで体が強張る。

「勿論、ですとも……では、このお嬢さんはお返ししましょうか。そちらもお返しいただけます?」
「嗚呼」

腕が降りたかと思えば、トンと背を押されて前に蹌踉(よろ)めいてしまう。
バランスを崩した私の身体を今度は中原幹部の腕が支えてくれた。
汐野さんも私と入れ違う形で反対側に居た。

「次は無え。帰って上にそう伝えろ」
「……ええ」

男の声が少しだけ震えていた。

「帰ンぞ」と幹部が云ったので、私と立原はその場を去った。

半ば強制的にお開き状態となってしまった会場で、残された晩餐たちが少し寂しそうに見える。……もう少し堪能してやりたかった。

迎えの車が既に停まっているのを見つけ、私と立原は後部座席へ__乗り込もうとしたのだが。

幹部によって「お前はこっちだ」と助手席に乗せられた。

(わり)ぃな樋口」
「何で姐さんが…」
「幹部直々に頼まれまして。皆さん、お疲れ様です」

運転席に座っていたのは樋口一葉(姐さん)だった。幹部が私を助手席へ乗せたのはそういう事だったらしい。

車内は暫く静寂に包まれていたが、ふと気になった事があったので、私は口を開いた。


「中原幹部」
「あ?」
「初めから、幹部と汐野さんは恋人同士ではなかったということですか?」
「恋人なわけねえだろ……誰だ最初にそんな事云いだしたのは」
「少なくとも私じゃないです」
「私も小耳に挟んだ程度ですね」
「お、俺も違いますよ?」
「ったりめェだわ」

車内に小さな笑いが起こった。

ということは、汐野さんのあの態度も彼女の仕込みだったのだろうか。そう問われると何か違う気がして。


「でも、何で俺らに特令出したンですか?」
「直属の部下に腕の立つ()がいなくてな。姐さんを借り出すわけにはいかねえしと思ってたら、丁度広津に会ったから、Aに云うよう頼んだンだ」
「……じゃあ俺はAのオマケって事ですか!?」
「今更気づいたのかよ」


そう思うと


「もう黒蜥蜴辞めて俺の下に来いよ。その方が色々助かる」
「十人長にもなれてないのに、いきなり幹部直下はキツイですね…」
「じゃあ早く立原蹴落して十人長になれ」
「何か今日、俺への当たり強くないですか……」


____彼女が敵方で良かった、なんて。


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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時

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