きっと其の一 ページ1
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出会いは突然だった。
この前上司に連れていってもらったバーを気に入った私は、今夜は独りで呑もうと其処を訪れていた。
元々、あまり馴れ合いは好かない性分で、独りの時間もすごく大切な私にとっては、独り酒など日常茶飯事である。
私はカウンターの隅へ腰を下ろし、まず赤ワインを頼んだ。少ししてから運ばれてきたソレをゆっくりと味わっていれば、チリン、という音がしてまた客の訪れを知らせた。
「よォ、
口振りからするに常連らしい彼は、俗に云う"美形"で、少なくとも私の視界に入る女性たちを釘付けにした。私とて釘付けの例外ではないのだが、その理由が違う。
「……中原幹部…?」
そう、彼は私を此処へ連れてきてくれた上司の更に上司であり、組織で『五大幹部』と呼ばれ恐れられる男なのだ。そんな人が何故こんな所に…?
いや、驚いたが良く考えてみろ。
私の上司である広津さん__黒蜥蜴 百人長・広津柳浪は、中原幹部と親しいと聞いたことがある。
ならば此処が、五大幹部・中原中也の行きつけでも可笑しくない。
「…い…オイ、何無視決め込んでンだ手前」
「え?……えっ??あ、はい!?」
心臓が一瞬止まる感覚がした。
何故、何故私の隣に中原中也なる御方が居る?!
「とりあえず落ち着け。俺が誰だか、知ってるな?」
「ええ…存じております…」
知らないわけあるか。
五大幹部にして更にこの美貌なのだから。単純な実力の話も、女性たちによる浮ついた話も、毎日飽きるほど聞いている。
「手前確か、広津の処のだよな。名前は?」
「…AAと申します」
「へぇ、Aってのか。よろしくな」
「よろしくお願いします」
深々と頭を下げると、そんなに畏まるなと笑われた。どう考えても無理な話である。
狭いカウンター席で、あの中原中也と酒を呑む……同性に見つかったら一発で殺人対象になりそうな状況だ。
先ず話しかけられたのも
「なァ…今日此れから、時間あるか?」
_______はい?
真っ直ぐ此方を見つめる蒼に逆らえなかった私は、重力に負けたように、コクンと頷いた。
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時