(31)闇中のQ ページ35
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今私は地下牢を歩いている。
目的はただ一つ、夢野久作___通称・Q__に会うためだ。
静かなコンクリートに足音だけが響き渡る。
真暗な柵の裏側に、彼は居た。
『御機嫌は
そう声をかけると、小さな背中は此方を振り向く。
「何で可笑しな口調なの…?Aさん」
『私が気分屋なのは判りきっているでしょう?』
「そうだけど…"Q"って…」
彼は私に『Q』と呼ばれるのを嫌がる。
前に1度、太宰と訪れた際に彼と同じ様に呼ばないでほしいと本人の目の前で言われたのだ。
…そう考えると相当嫌われてるよな、彼奴。
異能力が無きゃ既に死んでるだろうな。
『何、ちょっとした冗談だよ、久作』
「意地悪だなぁ、Aさんは」
『知らなかったの?』
「真逆」
すると久作は辺りをキョロキョロと見回した。
何が言いたいか大体判るが、敢えて何も言わない私は矢張り意地悪なのだろう。
「今日は、独り?」
『何時も独りじゃない』
「ここ2年くらい太宰さんが来てない理由…そろそろ教えてよ」
『今日まで誰も喋らなかったの?』
「僕とこんなに長話してくれるのはAさんだけだよ」
それもそうか。
下手な対応をして怨まれれば、其の生命はそこ迄と云っても過言ではないのだから。
『じゃあ話すよ。太宰はもう
久作は目を見開いた。
「何で?僕を散々此処へ閉じ込めておき乍、自分だけ逃げたの?」
『知らないよ。死にたがりの考える事は謎ね』
久作は何か云いた気に私を見ていたが、諦めたのか視線を逸らした。
其の侭話題も逸らす。
「じゃあ彼の人は?帽子被った小さい人」
『ブッフォwww』←
帽子被った小さい人(爆笑)
後で云ってやろう。とびきりの笑顔で。
『中也は居ないよ。彼奴も偉くなって忙しいみたい。小さいクセに』
「へぇ。Aさんは?」
『直属の部下みたいな役回りだね。上位の方だけど、暇はあるよ』
「そうなんだ…じゃあ、また会いに来てくれる…?」
ふと、久作の目が優しく光る。
こんな場所に居ても、未だ幼き少年なのだと思い知らされるようだ。
『嗚呼。勿論だよ久作』
「おいA!手前、此処に来る余裕なんて何処にあるンだ!そろそろ書類が山に成るぞ!」
『小さい帽子の人が来たみたい。じゃあ、もう行くね』
「うん。またね、Aさん」
久作に手を振って、小さい帽子から逃亡した。
(32)調子が狂うとは正にこの事→←番外編*夢のレパートリー
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ヤマダノオロチ(プロフ) - ありがとうございます!目指せシックスパックです← 更新頑張ります! (2016年8月7日 19時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
桔梗 - 『氏ね』の一言を遠回しに言ってる、その内容で爆笑して腹筋が痛いです(これで割れるかな←) 訳:面白いです。これからも頑張ってください。 (2016年8月7日 17時) (レス) id: b2f7131e28 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 雪凛 さん» はじめまして!コメントありがとうございます。共感してくださって嬉しいです(笑)頑張ります! (2016年6月9日 17時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
雪凛 - はじめまして!中也いいですよねぇ!かっこいいですよねぇ!もう、いろいろやばい…←とてもおもしろいです!これからも、頑張ってください! (2016年6月9日 16時) (レス) id: ca0edcb47b (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - わたがしちゃんさん» 同士様ですか…!ありがとうございます。頑張ります! (2016年6月5日 22時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年6月1日 0時