重力、夢中力【文豪ストレイドッグス】【中原中也】

(20)苦シミから覚まして ページ22

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＿＿＿＿＿…嗚呼、今私は夢を見ているのか。



そう思った。




目に巻かれたテープ。
塞がれた視界の代わりに、耳から流れてくる。
きっと、テープを剥がせば見える世界は悲惨そのものだ。




轟々と燃え上がる炎の音。

聴こえるのは警告(サイレン)と悲鳴。


望んでもいないのに、イメージが脳内で創り出されていく。




嫌だな…何でこんな景色…。



瞳を合わせて話をすれば、心まで通うと教えたのは誰だよ。

貴女でしょう？なら何でだよ。







何で私を『悪魔』って呼ぶンだよ。




色が判る、表情だって。
驚けば見開く事もできて、辛ければ涙が出る、夢中になって輝く事だって。

……じゃあ何処が、他人と違うのだろう。

何故、誰も私の目を見てくれないのだろう。


例え夢だと判っていても、其れは確かに私の記憶に存在し、永遠に消えることなどないのだ。





「…い……した………」





喉が苦しい。肺が痛い。心臓が潰れそうだ。

辛い、痛い、悲しい、苦しい…………



……誰か…誰か…＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿




『…………たす…け…て…』


「…い……オイ！A！」



やっとの思いで目が覚めると、私を見下ろす影が1つ。

少し癖の有る髪の毛と、色の白い整った顔立ちに寝惚けていた脳が認識を示した。



『……ちゅ、うや…』


「嗚呼そうだ俺だ。…お前…大丈夫か？」


『何、っ…？』


細い指が目元に伸びてきたと思えば、私の目尻を拭った。

そして初めて自分の涙に気付く。


「酷く魘されてたぞ。昏睡中に夢でも見たか」


図星をつかれて何も言えない。


『何日寝てたの。私』

「2日と半日だな」

『あー…微妙な日数だね』


「…悪かった……手前にだけ負担掛けて」


中也の躰は、傷痕一つ無く完全な状態のようだ。
まァ、当然と云えば当然だけれど。
そうでないと今回私は失敗した事になる。

夢変換は目を合わせた相手に起こっている事実を『夢』へ変える効果が有る。

詰まり、中也の汚濁や傷は事実上無かった事になるのだ。


『柄でも無いことしないでくれない？大丈夫だからさ。アンタが無事で何よりだよ』

「…ハハ…本当に可愛げの無ェ奴だな」

『そうそう。其れことチビ原小也だ』

「誰がチビ原小也だ」




……




「良かった……ｸﾞｽﾞｯ」

「お使いになります？」

「…悪いのう梶井……(ﾁｰｰﾝ」

「いえいえ……飲みに行くのは何時になるやら(ﾎﾞｿ」

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