ねえ、私の一等星。〈前編〉[レイ] ページ7
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(※【約束のネバーランド】天の川を歩くの世界線です。こちらの作品のネタバレを多く含みますので未読了の方はご注意ください。)
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じんじんと感じる耳の痛みなんかより、ここを出る希望と外への恐怖が私を支配していた。
「私とリオでまず上がる。その後みんなを引き上げる!」
「よしみんな!訓練通りやりゃあ大丈夫だ!」
エマとドンが全員に向かって声をあげると、それに応えるようにみんなの目が鋭くなる。
1番後ろでは未だ状況を掴めていないレイがぼんやりとその光景を眺めており、明らかに困惑している様子。
仕方ないよね、と眉を下げてから、私はロープを手に取り塀を登り始めた。
この塀の先、崖をつたって、森を駆けて、それから……何が私たちを待っているのだろう。
好奇心に想いを馳せながらも、同じくらいの恐怖と、わずかにある心残りやそれらを上回る罪悪感に苛まれて頭はぐるぐるとしていた。
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「──でも諦めたわけじゃない……2年以内に必ず戻る。リオやみんなと……リオ?」
私の挙動に気づいたのだろう。エマは私の顔を不安そうに覗き込んだ。
ついこの間散々泣いたばかりなのに、私はまた情けなく涙をこぼしていた。
全員を引き終えてロープを回収していたときのこと。
気づけば私の瞳はぼやけた世界を映し出していた。
嗚咽を漏らすでもなくこぼれるその涙は、まるで落花ように静かで。
「……うん、うん……大丈夫」
「……わかった。無理はしないでね。いつ病気の症状が出るかもわからないし」
「ありがとう、エマ」
どういたしましてとエマは笑うと、彼女はみんなと共に走り出す。
あんな笑顔を向けられては、私の罪悪感は増すばかりだ。
自分が汚い人間に思えてしまって、また自分のことを嫌いになる。
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作者名:月ノ瀬 | 作成日時:2019年6月8日 0時