検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:10,649 hit

ねえ、私の一等星。〈前編〉[レイ] ページ7

.


(※【約束のネバーランド】天の川を歩くの世界線です。こちらの作品のネタバレを多く含みますので未読了の方はご注意ください。)


.







じんじんと感じる耳の痛みなんかより、ここを出る希望と外への恐怖が私を支配していた。






「私とリオでまず上がる。その後みんなを引き上げる!」
「よしみんな!訓練通りやりゃあ大丈夫だ!」





エマとドンが全員に向かって声をあげると、それに応えるようにみんなの目が鋭くなる。


1番後ろでは未だ状況を掴めていないレイがぼんやりとその光景を眺めており、明らかに困惑している様子。



仕方ないよね、と眉を下げてから、私はロープを手に取り塀を登り始めた。








この塀の先、崖をつたって、森を駆けて、それから……何が私たちを待っているのだろう。



好奇心に想いを馳せながらも、同じくらいの恐怖と、わずかにある心残りやそれらを上回る罪悪感に苛まれて頭はぐるぐるとしていた。


.









「──でも諦めたわけじゃない……2年以内に必ず戻る。リオやみんなと……リオ?」




私の挙動に気づいたのだろう。エマは私の顔を不安そうに覗き込んだ。







ついこの間散々泣いたばかりなのに、私はまた情けなく涙をこぼしていた。




全員を引き終えてロープを回収していたときのこと。
気づけば私の瞳はぼやけた世界を映し出していた。





嗚咽を漏らすでもなくこぼれるその涙は、まるで落花ように静かで。






「……うん、うん……大丈夫」
「……わかった。無理はしないでね。いつ病気の症状が出るかもわからないし」
「ありがとう、エマ」




どういたしましてとエマは笑うと、彼女はみんなと共に走り出す。




あんな笑顔を向けられては、私の罪悪感は増すばかりだ。
自分が汚い人間に思えてしまって、また自分のことを嫌いになる。



.

ねえ、私の一等星。〈後編〉[レイ]→←歌声越しに願いひとつ[ノーマン]



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (16 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月ノ瀬 | 作成日時:2019年6月8日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。