片道逃避行[ノーマン] ページ4
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もうすぐリオの誕生日。
彼女に欲しいものはないか聞いてみたのがはじまりだった。
「プレゼントって、物じゃなくてもいいの？」
「物……？例えばどんな？」
「肩叩き券とか」
「ふふっ。うん、なんでもいいよ」
プレゼントという言葉に目を輝かせるリオは、あれが欲しいこれが欲しいと悩んでいる。
リオは気持ちが顔に出やすいから、今まで隠し事を隠し通せたこともないし、サプライズは下手くそだ。
でもそれは、裏を返せばわかりやすいってこと。
僕がおいしいご飯と言えば嬉しそうに笑うし、冗談で虫をあげると言ったら心底嫌そうに首を振る。
時の流れとは早いもので、気づけばリオも11回目の誕生日。
長く彼女に恋焦がれていたが、情けないことにその想いを告げたことはない。
「ほんとになんでもいいんだね？」
「もちろん。僕が叶えられる範囲であればだけどね」
「じゃあ──私、外に出たい！」
「……え？」
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ママに柵を越えてはいけないと言われている以上、外に行くなんてもってのほかだ。
1度エマたちと4人で門に行ったことはあったけど、僕が要求されているのはその向こう側の世界。
叶えられる範囲でと自ら注意喚起をしたはずなのに、リオの笑顔にかまけてその無理難題に承諾してしまった。
あの純粋な笑顔に勝てる人間はいるのだろうか。……少なくとも、僕はとても弱い方なのだと思う。
「ノーマン！」
1人悶々としていたところにリオがこちらへと駆けてくる。
「ノーマン！作戦会議しよう！」
「作戦会議って……」
「もちろん、外に出るためのだよ！」
彼女は本を抱えていた。それも外とはあまり関係のないものばかり。リオは僕の目線に気づいて、眉を下げた。
「……私、みんなで門に行ったときからずっと外に出たかったんだけど……ノーマンみたいに頭がすごい切れるわけじゃなかったから」
「リオ……」
運動が取り柄で、鬼ごっこはエマの上を行く実力のリオ。
僕からすれば、リオみたいな丈夫な体にずっとずっと憧れていたわけで。
僕がそんなリオの力に、今、なれる。
「──よし、調べよう。外の世界のこと、たくさん！」
「やった〜！一緒に外に出て遊ぼうね、ノーマン！」
「あっ、でもみんなにはばらしちゃだめだからね。僕らだけの秘密だ」
「うっ……頑張って隠します……」
「はい、いい子いい子」
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〈外を夢見たある少女の話〉
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作者名：月ノ瀬 | 作成日時：2019年6月8日 0時
