人殺し ページ17
Aside
私は床を拭いていた。
涙が溢れる。
妊娠してることを知ったのはつい最近だし、まだ状況を飲み込めてもいなかった。
なのにもう、死んでしまった。
私は会議が終わり、頭が痛いと思いながらも、書類をまとめていた。
立ち上がったその時、急にフラッとして気がついたら床の上。
目の前にはリヴァイ。
状況を理解するのに数秒かかった。
何と言ってもものすごい激痛だったから。
痛みには慣れていたつもりだったけど、耐え難いほどの痛みだった。
でもその痛みももうほとんどない。
つわりが酷くて四六時中頭痛や吐き気がしたのに、それももうない。
今考えてみるとそれもあの子が生きているという証だった。
そう思うと更に悲しくなってくる。
人なんて、何人も殺したのに。
子供なんて嫌いなのに。
こんなに悲しくなるのは私とリヴァイの子供だからなのだろうか。
なんで私の周りからどんどん人がいなくなっていくんだろう。
なぜなら、世界は残酷だ。
人生は不公平だ。
運命は過酷だ。
私は掃除を終えて立ち上がった。
その時、ドアが開いた。
「A、大丈夫か？」
入ってきたのはリヴァイだった。
謝らなくちゃ。
「ごめんね、リヴァイ。私のせいで。私が殺した…んっ！」
私の言葉はキスで遮られた。
私はされるがままでいた。
「謝るな。お前のせいじゃねぇ」
そう言ってリヴァイは私を抱きしめた。
なんで優しくするの？
こんな人殺し、放っておけばいいのに。
「落ち着けば子作りなんていくらでもできる。子供ができるまでいくらでも抱いてやる。元気出せ」
落ち着けば。
この世界に落ち着きなど、存在するのだろうか。
私はリヴァイの腕の中で、そんなことを考えていた。
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作者名：カシオペア | 作成日時：2017年9月16日 8時
