戻ったって変わらないのに (ページ47)

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『ありがとう』ページ47

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　 F「……いや、このまま寝たら北山に会えない気がして」

　 K「……」

　 F「……ごめん！変なこと言って、」

否定するように北山は小さく首を振った。けれど北山は藤ヶ谷の方を見ることは無く、ずっと天井を見据えていた。藤ヶ谷は謝ると同時に北山の方を見たのでこちらを見ない北山を心配そうに見つめる。視線を感じた北山は体制を変え、藤ヶ谷の方に向き直った。

いきなり姿勢を変えたことでベットのきしむ音が鳴る。それと共に藤ヶ谷は驚いて頭を少し後ろに下げる。離れてしまった藤ヶ谷を北山は悲しそうに微笑みながら目を合わせる。

　 K「……俺もそんな気がした、」

　 K「……藤ヶ谷が俺が居ない世界に行ってしまいそうで」

そう言い残すと北山は虚ろな目で俯いた。その北山を見て、藤ヶ谷は堪らなって彼の頭を包むように抱き寄せた。北山は涙を堪えるように藤ヶ谷の胸に顔を埋めた。藤ヶ谷はそれを察したようで抱き寄せる腕の力が強くなる。

　 F「俺はずっと北山の事が大好きだよ」

その言葉を聞くと北山は顔を上げて、藤ヶ谷の顔を視界に入れる。藤ヶ谷も泣きそうな顔になっていたのを見て、北山の表情は笑顔に変わった。再び深く藤ヶ谷の胸に顔を埋めると言葉を零す。

　 K「……俺、お前がいれば何でも乗り越えられるよ」

北山の言葉に藤ヶ谷の脳裏にはあのお葬式の様子が映された。何故その情景が浮かんだのか分からないが、藤ヶ谷は覚悟を決めろと言われているようだった。そう思うと酷く悲しい気持ちが込み上げて来て、また泣きそうになったが北山を不安にさせたくなかったので涙を呑む。

　 F「じゃあ、そろそろ寝ようかな」

　 K「……ん」

覚悟を決めた藤ヶ谷は北山も手に納めながら、瞼を閉じる。それを北山は寂しそうに見ていたが、藤ヶ谷と同じように目を閉じて意識を飛ばす。

眠りが深くなっている中、藤ヶ谷は北山に「ありがとう」と伝えるのを忘れたと思ったが、その後すぐ藤ヶ谷の意識は完全に途切れる。

藤ヶ谷は目を覚ますと手の中に温もりは無く、服はちゃんと着ているのに酷く寒く感じた。「帰ってきたしまった」と思った藤ヶ谷は深く息を吐く。

一応元に戻っているか確認するため近くにあるスマホを手に取る。するとそこに表示されていたのは、2021年㋈21日と示されていた。それはまさしく北山が死んだ日だった。

藤ヶ谷は驚きのあまり、思わずスマホを投げ捨ててベットを飛び出す。急いで身支度を整えて彼の元へ向かって行った。