お前の彼氏、浮気しとったで。４ ページ5
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私の大好きな、落ち着いていて、まるで大人みたいな声。
そんな声に、後ろを振り向けば、当たり前の様に赤葦が立っていて。
私は何故か、驚かなかった。
無駄に、冷静やった。
｢…聞いてます？
何してるんですかって、言ってるんです｣
何も言わない私と北に、彼はさっきよりも声を強めてそう言う。
何、って。
なんで赤葦が、そんな事言えるんよ。
悪いのは、先にやったのは、赤葦やん。
｢浮気、やな｣
北は、いつものあの無表情で。
赤葦に向かって、少しも迷うこと無くそう言った。
赤葦が、少し疑問気な声を出したのが聞こえる。小さくて、言葉にもならない様な、そんな声。
分かるな、そういう反応するの。私もさっき、そんな感じやったから。
…と、まるで他人事。
｢Aさん、本当ですか？｣
そう聞かれて、私はぷいっと彼から目を逸らした。
別に、どうでもええやん。
もう、赤葦の気持ちは、どうせ私には向いてないんやろ？
気にする必要ないやん。
｢…否定しないって事は、そうなんですね｣
弱々しくそう言う赤葦に、少し胸が痛む。
でも、赤葦がそんな声出すのは間違っとるやろ。
｢…流石の俺でも、傷付きます｣
｢赤葦が、悪いんやんか｣
思わず、そう言葉が出る。
私が言ったことは間違ってない、ハズ。
やって、先に�猊盖き瓩靴燭里論岼韻笋蹇�
｢俺の愛し方が、足りなかったんですかね…。
…だったら、すみません｣
そんな今にも泣きそうな彼の声に、再び彼の顔を見た。
…何で、赤葦がそんな顔するん？
｢…え、やって、赤葦だって浮気しとったやん｣
そう、震え声で問えば。
彼は、切なそうに目じりを下げて微笑んだ。
｢…そんな事、する訳無いじゃないですか｣
…は？
何、言って。
｢…すみません、ちょっと、流石に。
俺、ここにはいられませんので…｣
そう言うと、彼は私らに背を向けた。
何でそんな、私が悪い、みたいな言い方なんよ。
｢あ、かあしっ｣
｢…別れて、ください｣
彼は、消え入りそうな声でそう言うと。
私らの前から颯爽と、姿を消した。
ごちゃごちゃの感情のまま、北の方を振り返れば。
彼は何故か、凄く嬉しそうに柔らかく微笑んでいて。
｢…悪く思わんでな？
Aのこと、欲しくて堪らんかったねん。
やから…許してや｣
彼はそう言ってニコリと微笑むと、また私の唇にキスを落とした。
『お前の彼氏、浮気しとったで』
__それは、ある悪魔からの囁きやった。
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
