君にはミルクティーがよく似合う。３ ページ17
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暫くの間、教室の扉の前でしゃがみこんでいたのだけれど。流石に、私も帰る準備しなきゃな。
そう思って、少しふらつきながらもその場に立ち上がった。
…取り敢えず、教室の電気消されてるし、電気付けてから準備するか。
そう決めて、蛍光灯のスイッチの方に足を向けた途端。
廊下を、パタパタパタと、走る足音が聞こえてきて。
段々と、音はコチラの方に近寄って来た。
誰だよ、廊下は走っちゃダメなんだぞー。
なんて、思いながら蛍光灯のスイッチに手を伸ばす、と。
｢如月さんっ｣
突然、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
…あれ。
ゆっくりと、声の方に振り向けばそこには。
私の大好きな人、山口君が息を切らしながら立っていた。
走ってたの、山口君だったんだ。
なんて、思いながら電気をつけても無いのに、スイッチから手を離す。
少し、暗い教室内なのにやっぱり山口君はふわふわとパステルカラーに包まれているように見えて。
恋のフィルターって、凄いなぁと、心の中で呟く。
｢どっ、どうしたの？
忘れ物？｣
…あぁ、もう馬鹿。
声どもってんじゃん…。
山口君は、そんな私の声にフルフルと首を横に振った。
え、じゃあ何しに来たんだろう。
なんて、ポカンと彼を見つめていると。
スっ、と。
目の前に、あのいつものミルクティーの紙パックを差し出された。
｢ひと口あげる｣
｢…へっ？｣
素っ頓狂な声が出た。
だって、ひと口って。
…ひと口、って、どういう事。
それは所謂、関節キ…。
｢如月さん……Aちゃんも、好きでしょ？
ミルクティー｣
…私、ミルクティーが好き、とか。
山口君に言ったことあったっけ、なんて思いながら。
彼から、流されるように紙パックを受け取る。
中身は、多分半分くらい無くなっていて。
ドクンドクンって、心臓の鼓動が煩かった。
｢…い、いいの？｣
｢うん｣
そう返した彼は、優しく微笑んでくれて。
よく分からないけど、顔がすごくすごく熱くなって、どうしたらいいのか分からなかった。
パクリ、と。
勇気を出して、目の前のストローに口を付ける。
ちゅうっと、中身を吸えば、少しぬるくて甘ったるいミルクティーが口の中に広がった。
久々に、飲んだ気がする。
甘い甘い、この大好きな味。
ぱっと、ストローから口を離せば。
何故か凄く嬉しそうに、山口君は微笑んでいて。
もっともっと、胸が苦しくなった。
｢…やっぱり、俺よりAちゃんの方が似合うね。
ミルクティー｣
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
