《悲報》姉さんが嫁入りしちゃう…！【ヒプノシスマイク】

姉ちゃんが六人 ページ10

鍋を見る姉ちゃんの横顔を盗み見る。
　可愛くて、家庭的で、優しくて、非の打ち所のない女性。
　やっぱり姉ちゃんを、他の男に渡すなんて、出来ない。


「姉ちゃん」

「んー？」


　グリルを開けながら、姉ちゃんは返事をする。
　焼き魚の香ばしい匂いが広がる。

「俺、姉ちゃんの朝飯毎日食べたい」

「……ふふっ。 そこまで言ってもらえたら、こっちに住むのもアリだよねぇ」


　一郎許してくれるかな、と姉ちゃん。
　毎日姉ちゃんと一緒、かあ。
　なんか、いいかも。

「俺！ 兄ちゃんに相談してみるよ！」

　きっと、いや、絶対許してくれる。
　姉ちゃんは嬉しそうにそうだね、と笑ってる。


「そしたら毎日料理しがいがあるよ。 三人とも、すっごい美味しそうに食べてくれるもん」

「ったりまえだろ。 姉ちゃんの飯、すっげぇ旨いもん」

「あら、ありがと」


　ほんとに、ほんとに旨い。
　そのことを伝えようと口を開くと、三郎が「洗濯物干し終わりました！」と姉ちゃんに駆け寄った。

「おつかれさまー、おかげで助かったよ」

「ねえさんの頼みとあればなんでもやりますよ！」


　ご褒美、と姉ちゃんの皿から菜箸で玉子焼きを一切れ取り上げ、三郎に食べさせる。
　三郎は「ねえさんの料理はとっても美味しくて、最高です！」とでろでろの間抜けた笑顔で感激していた。

　こっちを「ﾄﾞﾔｧｧ」と音がつくんじゃないかという程のドヤ顔でこちらを見る三郎。
　だが俺は大人の男、山田二郎。
　姉ちゃんと(間接)キスした俺はもはや余裕しかない。

「じゃ、一郎起こしてくるから、二人はご飯お願い」


　慣れた手つきでエプロンを外しながら姉ちゃんは言う。
　姉ちゃんが出ていった瞬間、三郎か吠えかかる。

「何？ そのすかした顔、腹立つんだけど」

「ふっ、はははっ！ さぶろぉ、さっきからきゃんきゃんきゃんきゃんっ、負け犬の遠吠えっつー言葉は、お前をまんっま表したような言葉なんだなぁ！」

「あ？ 負け犬はどっちだか……。 これだから低脳は、理解力が根本的に欠けてるよ」


　頑張って煽るこの弟を褒めてやりたい。
　姉ちゃんと俺だけの秘密にしておこうと思ったが、しょうがない。


「俺、姉ちゃんと(間接)キスしたし」

「はぁっ？」


　瞬間、三郎が走り出す。


「ねえさァァァァん！！！！！」

「や、ちょっ！ 待てっ！ 三郎！」

　アレは煽りでもなんでもない、本気の三郎だ。

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