検索窓
今日:2 hit、昨日:32 hit、合計:183,778 hit

# 渡辺彪雅という男 ページ44

やまとを傷つけた。
その事実がどうしようもなくのしかかる。



そんなつもりじゃなかったのに。
あたしはただ……



ひ「やまと。Aに家から出ないでって言ったのは何で?」



今更何を聞き出すのだろう、この男は。
そんな分かりきったことを聞いて何になるのか。



『もう他の男に見られたくなかったから』


ひ「じゃあ、家から出させないことでやまとはどうしたかったの?」


『…Aの世界が、俺だけになればいいと思った』



彼の手がだんだん離れていく。
彼とあたしを繋ぐ温もりが消えていく。



ひ「Aの世界はお前だけになってたか?」



必死に握っても力は返ってこない。



ひ「やまとはさ、いっつもコムドットのために駆けずり回って
色んな仕事取って企画も構成も考えて
俺ら引っ張ってくれてるよな」


ひ「けどその分お前はここにいて、隣のマンションには居ない」


ひ「Aが居る隣の世界に、お前は居ない」



ズン、と胸に沈んだ彼の言葉。
あたしの世界に彼はいない。



…そうだ、居ないんだ。
いつも一人でひたすら時間を潰して一日が過ぎるのを待つ。
休みがいつかなんて把握も出来ない職業。



あたしはずっと、寂しかった。



ひ「俺、Aよく耐えてると思うよ。
もっとやまとに寄りかかって
メンヘラになる可能性も低くないのに」


ひ「お前がいつも朝元気なのは、文句も言わないで
Aが送り出してくれるからだろ?」



彼の手の力が少しずつ戻ってくる。
その手は心做しか震えてた。



『……A、』


ひ「クソいい彼女じゃん、お前の女」



頬に一滴の雫が流れた。
視界はぼやけ、皆の顔がよく見えない。



耐えてきた寂しさが涙となって溢れ出す。



ひゅうがの言葉は重いのだ。
そして、芯を捉えている。



『……ごめんね…』



彼の頬にもまた、光る雫が零れていた。

# ' コムドット '→←# 剥がれていくウソ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (221 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
604人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ぽっぷきゃんでぃー(プロフ) - めっちゃ面白かったです!ドキドキハラハラしながら読ませていただきました!次のお話も楽しみです! (2022年7月12日 8時) (レス) @page47 id: f61bb11568 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 主様のお話最高すぎました!もう何回も読んじゃってます笑次回作も楽しみにしてます🤓 (2022年7月12日 0時) (レス) @page47 id: d21abb511d (このIDを非表示/違反報告)
ワニ(プロフ) - 弊害のある恋愛…いいですよね(笑)社長推しでもあるのでこの作品はホントに大好きです🤍ぜひバッドエンドも読んでみたいです!!新作も楽しみにしております♪ (2022年7月11日 23時) (レス) @page47 id: 92673463af (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 毎日の楽しみでした、、ステキな作品に出会えて幸せです(><)次回作も楽しみにしてます! (2022年7月11日 23時) (レス) @page47 id: 06e789b518 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 書き方うまぁぁいつも楽しませてもらってます🫶🏻続き楽しみにしてます (2022年7月6日 0時) (レス) @page35 id: 765348961f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:яeu | 作成日時:2022年6月20日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。