16 ページ16
.
呼吸も落ち着いて、ぐったりと壁にもたれる阿部ちゃん。
目は開いたまま、でも何も写さず
どこを見ているのかもわからなかった。
「阿部ちゃん、ちょっと寝な?」
「ん、ほんとごめ…」
マネージャーが目に手を被せると、
反射的に瞼が閉じられる。
くたり、とマネージャーの肩に、
阿部ちゃんの頭が乗る。
「マネージャー」
「…過呼吸ね、初めてじゃないの」
「え、?」
「あとで話す、ひかる呼んできてくれる?」
阿部ちゃんの涙を拭いながら、言う。
俺が拭えなかった涙。
わかりましたって声になってない声で言った。
涙が出そうになった。
俺の知らないところで、阿部ちゃんに何かあったんだ。
阿部ちゃんが、壊れちゃう。
「岩本くん…!!」
楽屋のドアを開けて叫んだ。
俺じゃ、ダメだった。
「目黒、どうした?なに泣いてんの」
「あ、いや」
「生理的に出てくるやつ?
よく知らねえけど…何かあった?」
「あべちゃんが、過呼吸、なっちゃって」
「は?」
俺だって阿部ちゃんくらい運べる。
でももう、怖かった。
「ごめんひかる、阿部ちゃん寝ちゃった」
「いやまじ何があったの」
「うん、とりあえず楽屋までお願い。
そんで待ってて…あ〜、やっぱ阿部ちゃん医務室。
そんで楽屋で全員待機」
は?と首を傾げる岩本くん。
辛かったせいか、阿部ちゃんの頬は赤く、
岩本君の背に乗せるときに触れた背中は
とても熱かった。
905人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
真奈美(プロフ) - たそさんのTwitterのユーザー名を教えてください (2021年4月10日 12時) (レス) id: 0334695bad (このIDを非表示/違反報告)
そのこ(プロフ) - 途中から涙がとまらなくて今まで読んできた中で1番号泣ものでした泣 Anotherstoryを読みたいのですが、Twitterのリンクを貼って貰えないでしょうか>< (2021年4月9日 4時) (レス) id: cc7450bf42 (このIDを非表示/違反報告)
愛花 - コメント失礼します。この作品を読んだ時すごくすごく泣きました。感動する作品をありがとうございます。 (2021年3月13日 18時) (レス) id: ec8e2432fa (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - 最後まで読んで涙があふれてきました。全作読ませて頂いてますが毎回最後に泣いています。本当に素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年3月11日 23時) (レス) id: b8b91c3e87 (このIDを非表示/違反報告)
春流(プロフ) - 思わず泣いてしまいました。感動… (2021年3月11日 20時) (レス) id: d04bfa0561 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たそ | 作成日時:2021年2月20日 0時