淡雪の孤独

8.霞 ページ29

mm.






『阿部ちゃんと連絡がつかない』



それは、誰からの連絡だったか。




熱があった彼に、一緒に帰ろうと言えば
大丈夫だと交わされて。


また明日ねと言って別れた夕方から
まだそんなに時間は経っていなかったはず。


寝てるだけだろうと思っていたのに、
その希望はあっさり打ち砕かれ
家に行っても、事務所に行っても、
どこにも彼の姿は無かった。


mm「マネージャー！！」

マネ「わかってる！！
わかってるからちょっと待って！」


家の前まで来てくれたマネの車に乗り込み、
何度も何度も阿部ちゃんに電話をかける。


マネ「目黒！！これ、」


見せられたのは、
事務所の裏口から黒い車の前に佇む
1人の男の姿。


…阿部ちゃんだった。


mm「ねえ待ってこれ、田川、」

マネ「あのバカ！！
なんも相談しねーでなにやってんの！」


抵抗する阿部ちゃんは、
田川に引きづられるように
車の中へと連れ込まれた。


熱のある体で抵抗なんて出来るわけない。


事務所やメンバーと連絡を取り合いながら、
とにかく車を走らせる。


無理やりにでも、送ればよかった。


ねえ、あべちゃんどこにいるの。


ねえ、あべちゃん。


俺、気付いたことがあるんだ。

阿部ちゃんが居なくなってから気付くなんてバカだよね。
でもこれは絶対に、絶対に
阿部ちゃんに伝えなきゃダメだから、


ねえ、だからさ、教えてよ。


絶対に無事でいてよ。

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す