【約束のネバーランド】能ある鷹は爪を隠す

第四歩 ページ4

どうして俺が、この孤児院の秘密を知っているのか。






それは至ってシンプルなことだ。







俺には、"幼児期健忘"が起こらなかったからだ。









人は誰しも知らぬ間に赤ん坊の頃の記憶を失くしてしまう。









それが自然で、









普通のことだ。









でも、ごくまれに。









胎児の頃からの記憶を持った人間がいる。









その一人が『俺』という訳だ。









だから知ってる。









この施設の存在意義も、









母親と皆が慕うママの正体も、









此処に居たら誰しも迎える事になる結末も、









だから俺は決めた。









必ず此処から『脱獄』すると。









脱獄するにあたって、俺は自分の実力をアイツらに隠す必要があった。









少しでも切り札は残しておいた方がいい。









そう考えた俺は、今の様なママとの勝負を始めた。









自分は"普通"の人間ではないと、









自分は人よりも"優れた"何かを持っているのだと、









相手に与えても一番リスクの少ない"記憶力"を使って、









今年で１２歳になる俺。









脱獄するなら、そろそろ動き出してもいい頃だろう。









「A、どうかしたの？」

「ママ〜、いつもの箱にクッキー入れてくれる？」

「また後で食べるの？」

「うん！後で皆に自慢しながら食べるんだ！」

「分かったわ。持ってらっしゃい」

「うん！」









最低限の食料を集め。









森の奥にある高い壁を超える為の道具を手に入れ。









己の耳に埋め込まれた発信機を壊す。









大丈夫。








大丈夫だ。









俺は何だって出来る。









その為にこれまで行動してきたんだろう。









「"俺"は････いや、"俺達"は必ず生きてやる」

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