【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

許そうとしている　沖田side ページ44

沖田side


「沖田隊長、約束をしましょう」


Aはそう言った。俺の手を握ったまま、俺のことを真っ直ぐに見据えて、その丸っこくてまだあどけなさが残っているように見える、綺麗な目の中に俺だけを映して。その手のひらから伝わってくる体温は、その目から伝わってくる切実さは、ただ暖かいだけではなくて、ただ優しいだけではなくて。自分をどうしようもなく責めている俺に、まるでそこから言葉にはなり得ない、けれど確かにある想いを伝えようとしているようだった。Aの口から紡がれることはなくとも、優しい体温を持った手のひらから、瞳から、それはきっと、俺の中へと届いている。だから、胸がいっぱいになる。その分、泣き出しそうになる。

Aは俺を許そうとしている。恐らくは、最初から許している。憤りを感じて当然なのに、どうしたって目の前にいるこの女は、俺のことを許してくれる。俺がAに想いを告げる前、俺がAに酷い態度を取っていたときだってそうだ。傷付きながら、葛藤しながら、苦しみながら、俺の手を離そうとはしなかった。何があったって、どんなことを俺が言ったって、Aは俺の傍に居続けた。

今も、また、Aは俺の傍に居続けている。そして、こんなどうしようもない俺を、また救おうとしてくれている。


Aは小さく頬笑む。けれどその目に、強い意思を宿らせて。


「私達は、お互いを護り合って、背中を預け合って、そうやって、二人で生きていきましょう」


何度も目を背け、何度も踏みにじり、何度も破ってきた約束。俺は臆病だから、また破るかもしれない。Aからしたら俺は、Aを裏切るようなことをしていて、だからそういう風に疑ったって仕方のないことなのに、むしろそれが普通だと、ひねくれた俺は思ってしまうのに。それなのにAは、まるで俺を信じきっているような目をして、そう言った。

その目に、心臓が音をたてる。


「真選組が誇る随一の剣の使い手である沖田隊長と、そんな貴方が大丈夫だと言った私なんですから」


何も心配すること、ないと思いませんか？と。Aは挑発するように、いたずらっぽい笑みを浮かべてはそんなことを言って、そうして、「だから、私は、」と続ける。そっと、俺の手からその手を離しながら。


「貴方となら、何処でだって生き抜くことが出来るって、そう思います」

「…！」


離れた手に名残惜しさのようなものを感じていたら、その瞬間には、Aは俺の背中に手を回して、俺を抱き締めていた。


「私は、貴方の隣に居ますから」

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