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それでいいんです ページ42

「私は、…私は貴方が酷い人だなんて、最低だなんて、そんなことは思いません」

「…ッ」


…そんなことを、思えるはずないじゃないか。どうしてこんなにも切実で、優しくて、がむしゃらに護ろうとしてくれる彼のことを。こんなに苦しんでまで護ろうとしてくれる彼のことを、そんな風に思わないといけないのだろう。そんな理由なんて、何処にも見当たらないじゃないか。それなのに、自分のことを酷い奴だと、最低なんだと言ってしまう彼に、私の胸は痛みを帯びる。そんな彼の手を、握らずにはいられない。このまま離せなくなるんじゃないかというくらいに、私は彼の手を強く握る。彼の揺らぐ目を、しっかりと見つめる。私の言葉が嘘ではないことを証明するために。貴方の手をほどくことなんてないのだと伝えるために。

触れた手から、言いたいことが、伝えたいことがすべて伝わってくれればいいのにと、私は今こうして言葉を探しながら初めて真剣にそう思う。伝えなければならないことが、伝えたいことがあるのに、それがたくさんありすぎて言葉にならない。きっと、この全部を伝えるためには、この世界にある言葉なんかでは足りないのだろう。

本当に伝えたいことというのは、もしかしたらそういうものなのかもしれない。


けれど、私にはそれを伝える手段が言葉しか浮かばないから、なんとか言葉と言葉を繋いでいくしかないのだ。


「…貴方が私に謝っていることのすべてが、私のことを想っているが故のものです。…私はそれを知っています」

「…それでも、お前を弱者のように扱ったことと約束を破ったことは別だ」


「お前のことを想ってたって、それは間違ってた」と、彼は言う。彼はこうやって首を横に振るくらいに、自分を責めているのだ。

…確かに、弱い人間のように思われていたことも、約束を見つめてもらえなかったことも、悲しいことだけれど。


…そんなことは、私が彼を否定する理由にはならない。


「…でも、言ってくれたじゃないですか、大丈夫だって思えたって」


『…お前なら平気だと、思えたんでィ』


彼がそう私に伝えてくれたとき、私はこの時漸く、今まで自分がしてきた努力が、鍛練が報われたような気がしたのだ。やっと沖田隊長に認めて貰えて、彼の役に立てるんだって、とてつもなく嬉しくなったのだ。危うく、泣いてしまいそうなくらいに。必死で涙を引っ込めなければならなかったくらいに。


「貴方はそれを、私に伝えてくれた」


…私はもう、それでいいんです。

約束をしましょう→←彼と同じ



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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月15日 19時

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