怯える権利なんて 沖田side ページ39
…Aが竹刀を床に置いて、ゆっくりとこちらに歩み寄って来て。俺はAに何を言われても、何をされても、受け入れるつもりでいた。お前は最低な奴だ。軽蔑すると言われても何も言い返せやしないし、平手打ちをされたって仕方のないことだと思う。それくらいのことを俺はAにしてしまったのだ。ひたすら、ひたむきに努力を積み重ねて強くなろうとずっと前を見据えていたソイツのそんな気持ちを無視して踏みにじり、何度も約束を破り、その上まるで弱者のように扱って戦場から遠ざけて、それを護るためだと、Aのためだと言い張ってきたのだ。こうして並べてみると、それが最低なことだったと自覚してから見つめると、信じられないくらいに俺は酷い奴だった。
こんな俺は嫌われたって仕方ない。幻滅されたって文句は言えない。そう思う。けれどその一方で、自分勝手で臆病な俺が、嫌われたくないと、その手を離したくない、離さないでと泣いているように思っている。なんて奴なんだ俺は、本当に、救えない。自分で自分が嫌になってしまう。
一歩ずつ一歩ずつ、俺の元に近付いてきているAを、やはり俺は見つめることが出来なくて、何もない自分の足の指先を見据えていた。Aの影が、床に映る。もうソイツは、俺の目の前に立っている。
何かを覚悟するように、俺は唇を引き結んだ。生唾を飲み込んだ。怯える権利なんて、俺にはありゃしないのに。
そんなことを思って、嫌気のさす自分に向かって嘲るように内心で笑っていれば。
「…ッ、」
…す、と、Aの両手が伸びてきて、それが俺の視界に入ってきた。その手はキツく握り締められた俺の両手を取っては、優しく包み込むようにきゅ、と握ったのだ。少しだけ冷たい、けれど目を見開いてしまうほどに暖かなそれは、やっぱり俺よりも小さくて柔らかくて、けれどところどころ固かった。きっと、剣を握っていたときに出来たマメだと、すぐに理解した。
怯えとか、躊躇いとか、そんなことを忘れて俺は顔を上げた。そこには、軽蔑の眼差しも、怒りすらなかった。いつものように微笑んで、俺の目をしっかりと見つめているAが、そこに居たのだ。
「……沖田隊長、」
Aが俺の名前を呼んで、けれど俺はその声に応えることが出来なくて、呆然とソイツを見つめた。そんなことに対して訝しげな顔を見せることなく、ソイツは続ける。なんだか、泣き出しそうな顔をしながら。
その声に、俺は息を詰まらせた。
「私も、ごめんなさい」
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月15日 19時