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もぎ取る ページ29

ぶつけて、ぶつけて、払い除けて避けて交わして、体力は少しずつ、けれど徐々に確かに削られていく。足を踏み込んでは引っ込めたり、そのいちいちでさえも神経を使う。重心がぶれたら一環の終わりなので、立つ位置を迷うことは許されない。足を置く場所を間違えてしまえば、彼の重すぎる剣の勢いに負けてよろけてしまう。的確に、最適な位置を確認する暇も隙もないけれど、感覚でそれは補っていくしかない。けれど、そんな初歩的なことで躓くほど、私は弱くはない。一応、小さな田舎の道場で恐れ多くも神童と呼ばれてきたのだ。その名前に恥じぬように昔から稽古に勤しんできたし、今でも一番隊副隊長という名前を背負って、剣を握っている。

沖田隊長の素早くて重くて、迷いのない、ひとつひとつの攻めが研ぎ澄まされている技に食らい付くので必死だけれど、稽古で培ってきた感覚は生きている。考えなくても身体が動くくらいじゃなければ、真剣を手には出来ないだろう。


バシッ、バシンッと、絶え間なくその音が道場に響いていく。地面に足を踏みしめる音も、呼吸の音も。持久戦になっていけばいくほど、苦しい戦いになりそうだった。早いうちに、勝負をつけなければ。きっと、沖田隊長も同じことを思っているのではないだろうか。体力は限られているし、どれだけ短い時間で一人の敵を斬り伏せられるかも、戦う上で重要なことなのだと私は思う。

沖田隊長の攻撃が、さっきよりも増してきている。彼の一太刀を受け止める度に、腕にその衝撃が電流のように響いてくるようだった。それでも手のひらから竹刀が離れてしまわないように、握り締める。


このままでは負ける。そう思った。隙を。彼に生まれる隙を見つけなければ。そこを見逃さず、その一瞬ですべてを決めなければ、勝つことはできない。竹刀を振り回しながら、彼を観察する。瞬きなんて、もう暫くしていない。

彼にも一瞬くらい、隙は生まれるはずだ。いくら私が知っている中で一番強い人だからといって、隙がないなんてことは有り得ない。見つけるんだ。隙、隙を。


「…ッ、」


竹刀をぶつけて、ぶつけられて。それを繰り返して、私が彼の竹刀を受け止めて、一歩足を引いてから、次の瞬間。彼は竹刀を上に構えて、それを振り落とそうとしている。その時。彼のお腹はがら空きだ。

探していた隙。直ぐ様私は、その隙を狙う。沖田隊長の腹目掛けて、水平を描いて竹刀を振るった。


───これで、決める。


この一撃で、勝ちをもぎ取るんだ。

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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月15日 19時

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