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饒舌 ページ22

…道場に流れていた空気が、その色が、変わった。他愛のない言葉を交換しながら、私達は道場の真ん中、中心部に足を進め、向かい合って立った。そうしてお互いを見据えていた。額に張り付いていた薄い汗を袖で適当に拭って、息を深く深く吸い込んでは吐いた。まだ季節は春だというのに、この空間には熱気が籠っているようだった。さっきまで一人きりで竹刀を振るっていたときとは全然違った感覚。ピリピリとした電流のようかものが、この室内に迸っており、それが私の身体に入ってきているみたいだった。そんな雰囲気の中に立っているからか、なんだか自分が饒舌になっている気がして、後で自分の発言に後悔することになりそうだと冷静なところで考えた。道場で、沖田隊長を目の前にしてこんな状態ならば、本物の戦場では、生と死が紙一重の場所では、どんな感覚なのだろう。そんな純粋な興味があった。

沖田隊長や副長や、局長に討ち入りに参加してきた隊士さん達は、とっくにその感覚を知っているのだろう。その感覚を共感するために、私はここに立っているのだ。これから彼と交えることになる竹刀を片手に持って、心臓を鳴らしながら。まるで死の可能性を目の前にして、生きていたいと身体が必死に叫んでいるように。


沖田隊長は準備体操というように肩をぐるぐると回しては、グッと竹刀を力強く握った。もういつでも行けると言いたげに。


「今のうちだぜィ、やめておくなら」

「やめるつもりなんてないので、大丈夫です」


沖田隊長の言葉に、薄く笑って見せながらに私はそう返した。なんの意図があって彼がそんな忠告のようなものをしたのか、分かるようで分からないけれど、恐らくは彼の中の僅かな良心が働いたものなのだろう。失礼かもしれないけれど、彼の中にあるのは悪意が大半なので、訂正するには理由がなかった。

やめるわけにはいかない。やめると言ってしまえば、私は沖田隊長に挑まずして敗北することになる。不戦敗というやつだ。そんなのは、許容できるものではない。武士として、侍として、刀を握る者として、あってはならないものだと思う。沖田隊長が何を思ってそんな言葉を告げたのだとしても、手にした剣を放り出すようなことはしない。その意を示すように、私も竹刀をギュッと握り締めた。


「こちらはいつでもいけますよ、そちらは?」

「……こっちもでィ」


やるならさっさと始めようぜィ、と。彼は笑う。自信があるようにも見えるし、ないようにも見える、複雑な表情で。

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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月15日 19時

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