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この様は 沖田side ページ2

『…貴方の隣で、貴方を護らせてください』


…そんな、Aの言葉を思い出していた。討ち入りが行われることを伝えられてから、いや。それよりも前から。その言葉を告げられたその時から、それは俺の中にあった。胸の深い部分に。きっと俺が大切だと思い、それらをしまっている場所にそれも置いてあった。それは時折、ふとした瞬間に顔を出しては、俺の思考を占領していた。風呂に入って湯船に浸かっているときとか、眠ろうと布団に潜り込んだ時だとか。そういう何気ない時間に、そのことをずっと考え続けている。Aのその言葉を、忘れたことはなかった。けれど俺は今まで、まるで忘れているかのように振る舞っていたのだ。

Aからのそんな切実で、誠実な言葉を、足蹴にするようなものだった。それを理解していても、いざそれと向き合おうと思うと、怖かった。

白い壁や天井、床に覆われた病室で、俺はAの手を頼りなく握っていて。Aはそんな俺の手をしっかりと、優しく握り返しながら、そう言ってくれたのだ。自分は危険から遠ざけられて、護られて、それで俺が傷付くのなら。そんなものは幸せではないのだと。一緒に戦って、傷ついた方が、痛みは少ないのだと。だから、俺の隣で戦いたいのだと。そう言ってくれて、素直に嬉しくて。やっぱりコイツだなと改めて確信して。


…護るための覚悟を、俺も決めなければならないと思った。それなのに、

…なんだ、この様は。


「…アイツは察しがいいですからねィ……きっと、こっちの心情のことを考えてるんでしょう」

「…そうだな…」


土方さんは多くを語ろうとはしなかった。そりゃそうだ。土方さんが、そんなことをするはずがない。Aが土方さんに語ったことをそっくりそのまま俺に伝言のように伝えることは、きっとしないだろうと思う。これは俺とAの問題で、本当なら土方さんがこうして部屋に訪れて、わざわざ話をする必要なんてないのだ。土方さんが気むずかしげに、少しだけ苦しげに俺を見据えることなんて、なくて良かったはずだった。

それもこれも、俺が情けないから悪いのだと、俺は知っていた。


俺が、恐れているから。Aが戦場に足を踏み入れて、傷付けられて。もしかしたら消えてしまうのではないかという可能性に、俺は怯えている。大事なものを失うことへの恐怖が、俺の足を止めている。それを振り払えるのか払えないのかは、俺次第で、Aはもうとっくのとうに覚悟は出来ていて。


…なのに、俺が怯んでいるから、Aも足を止めてしまっている。

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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月15日 19時

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