会いたい人は...４ (ページ32)

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話し合いページ32

私にとって、

この男はただの殺人犯。

邪な感情で

私の全てを奪おうとしている...狂人。

普通の感情なんて、持ち合わせていない

...そう思い込んでいた。

【幸せでいて下さい】

この言葉にはっとした。

この男からこの言葉を聞くとは思わなかった。

私は誰かを想う時、幸せでいてほしいと願う。

同じ言葉をこの男が言った。

そんな感情がある事に驚いていた。

この男が、私の幸せを願うなんて...

この男自身が苦しんでたなんて...

微塵も思ってもいなかった。

この人も人生が狂ってしまった一人なのかも

...でも、

そうだとしても、
まだ私の中の憎しみは消えていない。

消えない憎しみに蓋をして、話を纏めたとしても、私自身の解決にはならないと思った。

A【あなたを許さない】

男【...】

ガックリと項垂れた

A【私からケイと赤ちゃんを奪った】

男【...本当に..申し訳ありません】

A【どんなに謝ってもらっても、ケイと赤ちゃんは戻って来ない】

男【...】

A【ケイと赤ちゃんの二人分...誰かを幸せにして下さい。】

男【？】

A【そして、いつかその人と一緒に"昔の知人"として会いに来て】

男【...】

A【その時、あなたとその人が幸せだったら...その時にあなたを許します】

男は、その場に泣き崩れた。

泣き崩れる男を見て、私の目からも涙が溢れた。

男を許すと言えた瞬間、

自分自身も許されたような気持ちになった。

カイトさんが、私の手を強く握った。

クォンさんは、緊張の糸が切れたのか、椅子の背もたれに体を預け、天井を見上げてぐったりとしていた。

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男が、警察官と弁護士に連れられて部屋を出ていく。

部屋を出る瞬間、振り返り、私を見た。

男の目は、やっぱり、いとおしそうに私を見ていた。

それでも、私も目をそらさなかった。

そして、最後に頭を下げ、部屋を出ていった。