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囲まれていた彼女の手を引いて歩き出す。……この感じ前もあったな。
急に立ち止まった彼女はどこか答えを出そうとしていた。………聞きたくない、そう本能で叫んでも彼女は辿々しく言葉を繋ぐ。
「…だから、キヨくんの気持ちには…」
”答えられない”
__________ 聞かなくたってわかっていた。彼女が俺のほうを向いていないこと。彼女が同じ気持ちじゃないこと。ずっとあいつを見ていること。
わかっていたのに知らないふりをした。俺が弱いから。
最後の悪足掻きで彼女を抱きしめてみる。愛おしい彼女をぎゅっと。………今だけは、俺のものみたいに思えて虚しい。
キ「結局はフジなんだよなあ…ほんと」
キ「アイツが羨ましいよ。」
Aにそこまで想われるアイツになりたいと心のどこかで願っていた。好きだ、好きだよ。俺はアイツとは違うけど、泣いてる時いつだって駆けつけられる。
……でもそれでも、Aの中にはアイツしかいないんだよ。俺の中にAしかいないみたいに。
キ「俺のこと、少しは見てくれた？A」
わかりやすく揺れる彼女の瞳。……困らせてごめん。
本当いつこんなめんどくさいやつになったんだろ、…俺。
「私が悪いの。」
そう言って全部、自分のせいにする。違うよ、そうじゃない。Aも俺も悪くない。まぁ、ほんのちょっと弱ってるところに漬け込もうとした俺がまあ、ちょっと悪い、くらい…だよ。きっと。
「………本当にありがとう。」と優しく笑う彼女は目に涙を浮かべていた。最後までずるいなぁ、Aは。そんなの、こっちのセリフだよ。
キ「はは…なんでお前が泣いてんの？」
キ「本当、泣き虫だなあ。」
ぎゅっと力を込めて涙を我慢していた彼女が大きな瞳から涙を溢す。そっと彼女を解放する。
キ「俺、Aの親友でいるよ。…ずっと。」
自分から吐き出した「親友」の言葉にズキズキと胸が痛む。そう、「親友」。俺にしかできない役割だろ？……ずっと俺の親友でいてくれ、な？
キ「………じゃ、先行ってるから！」
一方的にそう告げると、彼女に背を向ける。ほんの少し泣いてしまったことがバレてないといいけどな。
客席に戻ると、何かを察したこーすけが俺に近づいてくる。
こ「………お前、………」
キ「しっかり振られたわ！！！！」
こ「お前！……かっけぇよ！！！流石、俺の親友だな〜！！！」
「やるよ。」って言われて差し出されたコーラを流し込む。彼女の恋心と一緒に。
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作者名：抹茶ふらぺちーの！ | 作成日時：2021年7月29日 0時
