春、きみの足音。 ページ1
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日向が帰ってきたらしい。ブラジルから、日本に。何故か私はそれを月島から聞いて、ただバカみたいにそうなんだなんて言っていた。大学のカフェの窓際、やたらと陽が当たる席でのことだった。
「……いい加減、仲直りしたら？」
「別に私たち喧嘩してるわけじゃないよ、ツッキー」
「ツッキーって呼ばないでくれる」
「はいはいツッキーツッキー」
「怒るよ」
なんて言いつつ、月島はおとなしくコーヒーを啜った。高校時代から何度もこんなやり取りをしているので、もう慣れたものなのだ。陽光が彼の色素の薄い髪の毛に降り注ぎ、きらきらと光っている。その清潔感がやたらと月島を大人びて見せた。
「最近の月島はなんだかコーヒーが似合うね。変なの、高校の頃は薄めたスポドリばっか飲んでたのに」
「……今でも飲んでるけど、スポドリ」
「そうだけどさあ」
大学三年、三月。「たかが部活」なんて言っていた月島はどこへやら、彼はまだバレーボールを続けている。高校のときはマネージャーをしていた私は卒業と同時にバレーにほとんど関わらなくなって、だからあまり詳しく知らないのだけれど、成績も上々なのではないだろうか。プロになったり、するのかな。なんだか怖くて、私は彼に進路の話を持ち出せないでいる。
「日向は多分、今でもコーヒー飲めないと思う」
私も未だに苦手だし、と付け加える。一瞬頭によぎる、懐かしい青春の記憶。苦っ、なんて顔をしかめるベビーフェイス。私のそんな回想を、月島の冷たい声が蹴散らしていく。
「分かんないでしょ、そんなの」
「分かんない……うん、分かんないよ……会ってないどころか連絡も取ってないもの……」
「あーもう、自爆しないでくれる、めんどくさい……」
眉をひそめた月島が、苦いため息をつく。いつもの皮肉めいた響きはなく、本心から面倒だと思っている声音だった。思わず机に突っぷす。春のくせにやけに強い日差しがじりじりと首筋を焼いた。
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さかき(プロフ) - 莉葵さん» ありがとうございます！次の作品もぜひ読んでやってください〜 (2020年5月31日 12時) (
レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
莉葵 - 追記.応援してます！新作できたら、教えてくださいね(^^)日向愛が溢れちゃってます汗 (2020年5月30日 12時) (レス) id: 5b76c35070 (このIDを非表示/違反報告)
莉葵 - すごく良いお話でした！感動しました！日向を見る目が少し変わった気がします笑 (2020年5月30日 12時) (レス) id: 5b76c35070 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - Ria*さん» 励みになります、ありがとうございます！日向いいですよね… (2020年5月29日 22時) (レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 依さん» 依さんありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです！こちらこそまた読んでやってくださいな！！ (2020年5月29日 22時) (レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかき | 作成日時：2020年5月29日 16時
