初対面プロポーズ女の苦難【宮治】

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「とーにーかーく！ 単刀直入に聞くけど、お二人さん、治くんから好きな人がいるとか聞いてない？」

「いや、聞いてないけど」

「俺もやで」

「えっあっ、じゃあとりあえずのところ安心していいかな！？ あっでも思春期の男の子ってそういうの同性でも言わないのかな……！？」

「思春期とか男子とかはさておき、Aほど好意を隠さないほうがレアやで」

「ごもっとも！」

　また角名くんから「色気がない」と評されてしまいそうなうめき声を上げながら、頭を抱える。侑くんが言うように、私は全く治くんへの好意を隠さないし隠そうとも思ったことがないから、余計にわからない。

「あの女の子が治くんのことが好きかはさておき、治くんに好きな人がいたら私は身を引くを得ないじゃんね」

「変なところリアリストだね」

　だから聞いてみてよ、お願い！ と頼み込む。が、二人はつれなかった。

「おかしいやろ。普段会話の八割がバレーを占めとるような奴から、近所のお節介なおばはんみたいなこと聞かれるんやで？」

「いくら鈍くたって、流石に変に思うよ。警戒されるんじゃない？」

　確かに、それは道理だ。部室で着替えているとき、あるいは食事をしているとき、だしぬけに侑くんや角名くんが恋バナを展開すると考えたら……うん、怖い。

「なんか失礼なこと考えとるやろ」

「いえ滅相もない。じゃあ好み！ 好みのタイプとか！」

「知らないよ、それは片割れのほうがよく分かってるでしょ」

「あっ角名、お前逃げよったな！？」

　ギャーギャーと喚く侑くんを、半分わざと期待した目で見つめる。侑くんは案外、こういうのに弱い。

「頼むよー、やっぱり指針があったほうが努力しやすいんだよー」

「まともな理由つけられるとなんや断りにくいなあ」

　にやあ、と笑う侑くん。なんだか嫌な予感がするので角名くんに向き直る。

「お願い角名く――」

「ええで」

「えっほんと！？」

　ぐりん、と光の速さで振り向く。首から変な音がした気がしたが気にしない。ありがとう侑くん、きみのこと性格に難があるよななんて考えててごめんね……！

「条件がある」

「なに！？」

「今度の週末付き合って」

「え！？ いいけど！」

　ええんかい、いいのかよ、と声が被る。そのくらいお安い御用だ。

　話を聞いてもらったお礼に、角名くんにジュースを贈呈する。治くんにあげるつもりだったけど、しょうがない。侑くんはどうせ週末に奢らされる。

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