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邪気のないその表情に、目を奪われる。
「やっと、俺のもんや」
がばっと勢いよく抱きしめられる。痛い、痛いよ。腕をペちペち叩いて解放を要求しようと思ったけど、思い直して初めて両手を背中にまわした。不慣れなことがばればれな仕草で、ぎゅっと抱きしめる。
「可愛いなぁ、お前」
そうだった、治くんは自分の気持ちに素直だった。相変わらず恥ずかしい、でも、今はなんだか心地いい。
不意に、拍手とヒューヒューと冷やかす音が耳に入る。先頭に立って、一番大きな声でヤジを飛ばしているのは侑くんだった。なんでここにと思ったけれど、そうだ、ここは卒業式後で思い切り人がごったがえす体育館前だ。
「……治くんだめだ、やっぱり無理恥ずかしい、離して」
「いやや」
かくなる上は暴れるか。密かに拳を握りしめた瞬間、「この場所、お前がプロポーズした場所やで」と囁かれて抵抗を諦めた。そうか、こんな気分だったのか……そうか……。
なんかごめんという気分になったけれど、近づいた顔の距離を見て何を思ったのか侑くんの声がひときわ大きくなったので、奴には必ず報復しよう。でも色々と気をもんでもらったのはもう分かっているので、感謝しながら殴ることになるだろう。
そんな支離滅裂なことを考えているくらいには、頭がボコボコと音を立てて沸騰していた。
「なあ、すきって言ってや」
治くんからの唐突な提案。なんでだろう、昔は大安売り状態だったのに、今はものすごく恥ずかしい。
「なあ、だめ？」
少し舌っ足らずの甘えたような言い方は、多分確信犯だと思う。ああ、もう。私は半ばヤケクソで、約三年ぶりの大声を出した。
「治くんが大好きですバカヤロー！」
今更逃げられない。ようやくわかった、よく聞け私。「二年間をなげうつに値する人間か」という問いの答えは、イエスだ。少なくとも治くんにとってはそうだった。
そして、私もまた結局三年間を彼を振り回し、振り回されて過ごしたわけだ。もういい加減認めようじゃないか。ずっと釣り合うだ釣り合わないだでうだうだしていたけれど、少なくとも私たちは似たもの同士でお似合いなんだって笑ってやろう。
「治くん、私ちょっと泣きそう」
「お前泣き方汚いから勘弁せぇや」
「ひどくない！？」
嘘やって、と笑う彼がなだめるみたいに背中をさすってくれるから、私は少し痛いくらいに勢いをつけて彼の肩に顔をうずめる。そして、好きだとつぶやいた。
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さかき(プロフ) - mimiさん» 話数的にあと一話だけなら書けそうです。内容によっては私に向いてないかもしれないんですけど、もしよかったらリクエストとかありますか？あるようでしたらボード？にお願いします (2019年9月19日 7時) (
レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初コメ失礼します。きついです、この作品まだまだ続いて欲しいです…（ ; ; ）本当に2人とも可愛くて… (2019年9月19日 2時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 瑞稀さん» やったー！好きとか可愛いとか言って貰えて嬉しいです！治は甘え上手なイメージがあります笑番外編も楽しんで貰えたら幸いです！ (2019年9月18日 23時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - あぁぁぁ！！！めっちゃくちゃ好きです！！！番外編も嬉しいですありがとうございます！！治くん甘えた可愛すぎて… (2019年9月18日 18時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - まゆ。さん» おつありです！満足いただけたでしょうか。治で書くかどうかは分かりませんが、書きたいネタはいっぱいあって私自身ワクワクしてるので、よかったらまた読んでやってください！お粗末さまでした！ (2019年9月18日 16時) (レス) id: cb48af79f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかき | 作成日時：2019年8月9日 17時
