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やはり警戒は解かぬまま、一見無防備極まりないそいつを見下ろした──刹那、目の前の顔に愉しげな笑みが浮かぶ。



「コレも仕事なら、『起きて』じゃなく、」

「………え」


「『起きて下さい沖田隊長』だろ」



沖田様でも可、とのこと。……ここで一つ聞きたい、このドSはどのタイミングでスイッチが入るんだ。一体何がきっかけで発動するんだ。

一応その言い分は理にかなっていなくもないので反論することもできず、私はただ頬をヒクヒクさせていた。……そして。



「……起きて、下さいってば。隊長」



普段普通に使っている敬語がこんなにも屈辱的だとは知らなかった。一方それはそれは愉しそうに顔を歪めたそいつは、私を鼻で笑ったかと思うと──……アレ。



「……隊長、何シテルンデスカ」



なんとこのドS、動きを封じるためか私を布団の中に引き込みやがったのである。暴れてやろうにも、キツく抱きしめられてしまって身動きが取れない。胸いっぱいに、総悟の匂いが。

一方本格的に眠るつもりなのか、総悟は私の首元に頭を埋める。



「──ちょ、くすぐった、たいちょ…ん゛っ、息吹きかけるなバカ!」

「……それ、そそる」

「はぁ!?」



有り得ない。──ちょっと顔赤くなったとか、本気で。

総悟の腕の中はどうしてかとても心地よくて、でもどうしてか落ち着かなかった。そんな気持ちから目を逸らすように「土方さんに叱られる、から」なんて紡ぐ。……しかし。



「──黙ってやがれ」

「……んなこと、言ったって、」

「どうせ任務完了したら野郎に報告だろィ、気に食わねェ」



耳元で発される掠れ声は大変心臓に悪い。けれど、困惑する私へ追い打ちをかけるかのように言葉は続けられ。



「てめー副隊長だろ。隊長命令より副長命令優先させてんじゃねェよ」



耳元に落とされたそれの色がいつも繰り出される屁理屈とはあまりに違うものだから、私は驚いてしまった。

驚きのあまり、再び眠りに落ちていった総悟を咎め忘れてしまった。




(──これ、絶対怒られるよなぁ。)


頭の中では冷静にそんなことを考える自分がいるのに、どうにもなんだか──この腕の中から、抜け出したく、ない。

らしくない願いを捉えた私はやっぱり困惑して、考えるのをやめた。もういっそのこと寝てしまおう。ここ、心地いいし。春は暁、忘れちゃうらしいし。



総悟との間の小さな隙間をごそと詰めた私をしっているのは、きっと窓から覗く桜の木のみであるのだった。

坂田銀時【月ヶ瀬ましろ】→←沖田総悟【中村】



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設定タグ:銀魂   
作品ジャンル:アニメ
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あくび少女 - こんな綺麗な物語、いつか私も書きたいです。 (2019年7月20日 22時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 今までどの作者さんも好きでよく拝見させていただいてました。今では、憧れから自分の小説を書いているのですが、皆さんの素晴らしさを身に染みて感じました。(宣伝みたいですね……ごめんなさい。)これからも沢山の作品を楽しみにしています! (2018年2月6日 22時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
うおーあいにー(プロフ) - 私が今まで見たことのない位の語彙力と素敵な言葉でできていました! (2017年12月9日 8時) (レス) id: 7ec2bdde97 (このIDを非表示/違反報告)
みぷ(プロフ) - 文章一つ一つが綺麗で、とっても素敵だなと思いました!表現や言葉にも意味が詰まっていてぜひ参考にしたいなと思う作品でした!次の企画があることを楽しみにしています! (2017年7月28日 18時) (レス) id: 941945c1ec (このIDを非表示/違反報告)
戦胡蝶(プロフ) - 本当に綺麗な言葉で綴られたお話ばかりで全部一気に読んじゃいました!素敵なお話ばかりで心がほっこりしてます!!素晴らしい作者様ばかりで私も見習わないとと意気込んでおります(笑)またこういう企画を行ってくださるのを楽しみにしてます! (2017年7月27日 13時) (レス) id: de5c5c0c62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しののめ x他4人 | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年7月1日 1時

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