・ ページ33
細い指は目の下を優しく撫でる。
_____大方、コイツは俺の瞳の色の事を言っているんだろう。
「……俺ァ嫌いだな、この瞳は」
『どうして?』
「___赤色は嫌ェなんだよ」
「痛ェから」と続ければAは呆けたように目を見開くと目を細めて笑い出した。
『それは、怪我の事を言っているんですか?』
「そーだよ」
『子供ですね』
「違ェわ。注射を嫌がるガキと同じ心理だ馬鹿ヤロー」
『結局子供じゃないですか』
クスクスと心地よい笑い声。肩を揺らしながら笑う彼女はやがで目尻に涙を溜め始めた。……どんだけ笑うつもりだ。そんなに面白い事を言ったつもりは無いんだが。
やはり、この女は不思議な奴だ。
それから暫くして、ようやく笑いが収まったらしいAは深々と息を吐き出して俺の隣に腰を下ろした。
さっきまでの陽だまりのような笑顔は何処へやら。今は、流れた涙をそのままに、憂いたような顔で“紅”を眺めている。
『銀さん、』
「おう」
『もし、私が貴方の事を
_____私を殺してくださいね』
「……、」
彼女のしなやかな顎先から1粒、水滴が流れ落ちたのと同時に、今にも消えてしまいそうな笑みを浮かべたソイツを____力の限り抱き締めた。
小さく「え」と困惑にも似た声を漏らし、体を強ばらせたAが、一体どんな顔をしていたかは分からない。
『銀さん…?』
「ンな事、言うなよ
殺してくれなんて、二度と言うんじゃねェ」
『……っ、でも、』
開きかけた柔らかなそれに自分のを重ねる。その言葉の先を遮るように。
再度体に力を込めたAだったが、やがてその手は俺の着流しを弱々しく掴み、再び透明なそれを目尻に浮かべた。
.
初めはただの同情だった。
コイツの目が俺の幼い頃と酷く合致していて。
でも、
有るか無いかも分からなかったこの想いは
いつの間にか降り積もって、
今ではもう
愛していた。
Fin.
110人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あくび少女 - こんな綺麗な物語、いつか私も書きたいです。 (2019年7月20日 22時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 今までどの作者さんも好きでよく拝見させていただいてました。今では、憧れから自分の小説を書いているのですが、皆さんの素晴らしさを身に染みて感じました。(宣伝みたいですね……ごめんなさい。)これからも沢山の作品を楽しみにしています! (2018年2月6日 22時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
うおーあいにー(プロフ) - 私が今まで見たことのない位の語彙力と素敵な言葉でできていました! (2017年12月9日 8時) (レス) id: 7ec2bdde97 (このIDを非表示/違反報告)
みぷ(プロフ) - 文章一つ一つが綺麗で、とっても素敵だなと思いました!表現や言葉にも意味が詰まっていてぜひ参考にしたいなと思う作品でした!次の企画があることを楽しみにしています! (2017年7月28日 18時) (レス) id: 941945c1ec (このIDを非表示/違反報告)
戦胡蝶(プロフ) - 本当に綺麗な言葉で綴られたお話ばかりで全部一気に読んじゃいました!素敵なお話ばかりで心がほっこりしてます!!素晴らしい作者様ばかりで私も見習わないとと意気込んでおります(笑)またこういう企画を行ってくださるのを楽しみにしてます! (2017年7月27日 13時) (レス) id: de5c5c0c62 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しののめ x他4人 | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月1日 1時