神威【月ヶ瀬ましろ】 ページ30
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「てめェ等なァ…いい加減にしろ」
そんな呆れた声を出したのは我慢も限界を超えた頃であった。吐き尽くした溜息の先に広がるのは神威とAの姿、尽きてしまったのは溜息だけでは無かった。
「「だってお腹が空くんだもん」」
声を揃えて悪びれもなく振り返った二人の手に握られているのは残り僅かになった食糧であった。つい昨日に買い足したばかりだというのに、もう食料庫の食材は尽きようとしている。一体どんな胃袋をしているのか。
「食うのは構わねェが、てめェ等さっきからちっとも景色なんざ見てねェじゃねェか」
そう言って周りの木々を仰ぐが、二人は見向きもせず一心不乱に食べ漁っている。誰も取らないと言うのに、何をもってしてここまで食べ続けるのか。この危険人物達から食糧を取り上げる馬鹿は居ない、やろうとした奴等は全て神威の鉄槌を食らったはずだ。
事の発端は神威の一言だった。
珍しく紅葉狩りがしたい等と風情な一言を発した為に木々の彩る地球にわざわざ寄ったというのに、紅く染まる紅葉の葉を愛でたのも束の間、あっという間に持参した弁当に食らいつく始末である。
「阿伏兎さんも食べましょうよ〜!!私と団長で食べちゃいますよぉ〜!!!」
団長が団長なら部下も部下である事に変わりはない。気の抜けたAのアホ面を拝んで阿伏兎は「アンタ等の食いかけなんざ要らねーよ」とこぼした。その食いっぷりを見ているだけで胃もたれがしそうである。
「嬢ちゃんよォ…太るぞ?」
神威は男だから良いとしても、Aの方はれっきとした女子である。流石にこれ以上食べ続ければ体型の方に影響をきたさない訳も無い。年頃の女にとっては大変由々しき事態であろう。しかし、
「阿伏兎ったら何言ってるの?Aが太るわけ無いじゃん」
「そうですよ〜昔から太りにくい体質なんで大丈夫ですよぉ〜」
どうやらこの言葉は全く刺さらなかったらしい。Aどころか神威までもがそんな心配はしていない。確かにAは食べる割にスレンダーな体型をしているが、太らないにしろ体に良くは無さそうである。阿伏兎は一人溜息を零した。
「それに、食べた分はちゃんと消費しますからっ!!ね、神威!!」
Aはそんな言葉を口にすると、神威と阿伏兎の顔を交互に見つめ、にっこりと笑った。
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あくび少女 - こんな綺麗な物語、いつか私も書きたいです。 (2019年7月20日 22時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 今までどの作者さんも好きでよく拝見させていただいてました。今では、憧れから自分の小説を書いているのですが、皆さんの素晴らしさを身に染みて感じました。(宣伝みたいですね……ごめんなさい。)これからも沢山の作品を楽しみにしています! (2018年2月6日 22時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
うおーあいにー(プロフ) - 私が今まで見たことのない位の語彙力と素敵な言葉でできていました! (2017年12月9日 8時) (レス) id: 7ec2bdde97 (このIDを非表示/違反報告)
みぷ(プロフ) - 文章一つ一つが綺麗で、とっても素敵だなと思いました!表現や言葉にも意味が詰まっていてぜひ参考にしたいなと思う作品でした!次の企画があることを楽しみにしています! (2017年7月28日 18時) (レス) id: 941945c1ec (このIDを非表示/違反報告)
戦胡蝶(プロフ) - 本当に綺麗な言葉で綴られたお話ばかりで全部一気に読んじゃいました!素敵なお話ばかりで心がほっこりしてます!!素晴らしい作者様ばかりで私も見習わないとと意気込んでおります(笑)またこういう企画を行ってくださるのを楽しみにしてます! (2017年7月27日 13時) (レス) id: de5c5c0c62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ x他4人 | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月1日 1時