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…こんな１月の終わりの真冬の気温の中、外でずっと待ってたなんて。
私の顔見て樹が笑って、離した手を握られる。
「お前、こういうことは気づくのな？(笑)」
「…だって」
「いーの、俺がやりたくてやってんだから」
今日は返信来ねえから店混んでて遅くなんだなと思って、暇だったから待ってただけだよ、って。
でも、って顔に出てる私に気付かないふりしてほら、お前が風邪ひくから帰ろって私の手を引いて歩きだす。
数歩歩いて、樹の背中を見て。
……やっぱり言おう。
ずっと何となく、心のどこかに引っかかっていたから。
「…樹」
「なに？」
「樹ってほんと、優しいね」
「は？(笑)」
なに急に、怖いんだけど(笑)ってあのよく知る顔で笑う。
「樹の優しさに甘えてた私がこんなこと言うのおかしいんだけど、」
「え、なに、待って。お前今何言おうとしてんの」
「……私もう大丈夫だよ」
先ほどとは打って変わって困ったような、少し焦ったような樹をわかってて言葉を紡いだ。
「待ってって。俺の話聞いてた？」
「聞いてたよ」
「じゃあ、」
「でもそれだけじゃないの」
「………」
慎太郎くんには待ってあげてよ、って言われたけど。
「樹は優しいから、私の為に色々してくれてたけど」
「ちょ、待って」
「…けど、」
「ちょっとマジで黙って」
手が離されて伸びてきた樹の手にきゅ、っと手首を掴まれる。
「……俺が優しさだけでお前のこと心配してたと思ってんの？」
「え？だって、」
「俺がほんとにただの友達として優しくしてきたと思ってんの？」
「……ちがうの？」
樹ははあ、と分かりやすく大きな溜息ついたかと思えば、鋭い視線に捕まる。
「…お前、ほんとどこまで鈍いワケ」
「…樹、」
「俺、Aのこと好きなんだけど」
少し不貞腐れたような顔をして落とされた言葉に脳が働くことをやめた。
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作者名：なち
| 作成日時：2021年9月19日 3時
