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華の金曜日、かつ団体の予約でいつもよりも１時間半延びた日。
着替えてタイムカード切った時に記された印字は『23:37』。日付を跨ぐ直前まで働くことになる予定じゃなかったけど、両手にジョッキ抱えてヘロヘロな店長にすごく申し訳なさそうに頼まれたら、
…というかこのバッタバタしてる店内をそのまま放って帰る選択肢はなかった。今日の混み具合年末年始並み。
二つ返事でいつもなら一度タイムカード切るんだけど、そんな暇もなく呼ばれた卓にハンディ持って駆け寄った。
さすがに疲れた……って裏口のドア開けたら
「…えっ、え？樹？」
「……あ、A。お疲れ」
「なにして……」
黒のダウンを着た樹が寒そうにしゃがみ込んでスマホいじってた。
「今日忙しかったの？」
ラインしたんだけど、って言われて慌てて鞄の中に入れっぱなしにしてたスマホ確認したら
『バイトあがった？』
『迎え行く』
１時間前に１つ、その１０分後にもう１つ。
「ごめん…！今日忙しくてそのまま入っちゃったから気づかなかった」
「いーよ、暇だっただけだし」
疲れたっしょ？早く帰ろーぜ、って立ち上がって歩き出した樹を追いかける。
「ねえ、いつから待っててくれたの？」
「…お前が出てくる１０分前くらい」
「うそ、迎えに行くって連絡してくれてたのもっと前だよ」
「嘘じゃねえって(笑)」
樹の手を掴んでみたら………やっぱり。
冷え性の私よりも冷たくて。
「ほんとは？」
「……４０分前くらい？」
「………風邪ひいちゃうよ」
バツが悪そうに視線ズラして言う樹。
４０分って……
掴んだ手を両手で包み込んで温める。
「……ごめんね、こんな寒いのに」
「だーかーら！謝んなよ、俺が来たかったの」
俺、心あったけーから、って笑いながらダウンのポッケに手を突っ込んだ。
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作者名：なち
| 作成日時：2021年9月19日 3時
