２１ ページ21
大人しくベッドに入って目を瞑る。
………怖かったな、
何度も目を閉じては開けて、寝返りを打ってみるけど眠れない。
たったあれだけの出来事が、こんなにも自分を弱くする。
どれくらい時間が経ったのかわからない。
ベッドテーブルに置いたスマホを手に取れば真夜中。
………とりあえず、お水でも飲もう。
ふぅ、と息を吐いて。そっとベッドから降りてドアを開ける。
冷たいフローリングは眠れない身体を余計に起こした。
カーテンの隙間から差し込む月の灯り。
そのいつもと変わらないはずの見慣れた景色が妙に不気味で。だけど、
奮発して買った大きめのソファにブランケットに包まって丸まってる樹の姿が背もたれ越しに目に入って、なぜかすごく安心した。
……樹、寒くないかな。クローゼットから毛布出して掛けてあげようかな。
樹を起こさないように静かに冷蔵庫開けてペットボトルを取り出してひとくち。
「……A？」
ぼそっと名前を呼ばれてびっくりする。
樹がむくりと起き上がって、ペタペタとこちらへ歩いてくる。
「………寝れねーの」
「……ごめんね、起こした」
「ふはっ、何で謝んの」
「…ごめん」
「…………」
樹の表情は暗くて見えない。けど、そのまま黙ったかと思ったら私の手からペットボトルを取って流し込むように飲んだ。
蓋閉めて冷蔵庫に戻した後、寝室へと私の手を引いた。
「何のために俺今日泊まったと思ってんの、謝って欲しくて泊まってんじゃないよ」
「……うん」
「……冷えるから、ほら」
無理矢理毛布の中に入れられる。
「…お前が寝るまでここにいてやるから」
「大丈夫、寝れるから」
「嘘つけ。いーから寝ろ」
「樹が寒いよ」
「俺は大丈夫」
「…でも、」
「…あーもーお前ほんっとに世話が焼けるな？」
狭いとか邪魔とか言うなよ、って頑なに寝ようとしない私を奥に追いやって樹がベッドの中に入ってくる。
「……樹、」
「なんもしねーって(笑)寝るだけ」
……そんなこと思ってないよ。
てかお前足冷たすぎ、って後ろで樹が笑う。言葉通りくっつけられた樹の足はあったかい。
口元まで上げられた毛布の上から樹の手が子供をあやすようにリズム良く動く。
「…樹？」
「ふ、なんだよ、まだなんかあんの？」
「………ありがと」
「…ん、いーよ。……おやすみA」
もうこれ以上喋ったら怒られそうだからそのまま目を閉じて、眠れるかな、なんて心配してたのが嘘のように眠くなっていつの間にか眠りに落ちた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1204人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なち
| 作成日時：2021年9月19日 3時
