52.後悔 ページ3
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それから私は藻掻いて、暴れて、何とか拘束から逃れた。引っ掻いた指には私のものではない血が爪の間に挟まっていた。
引っ張られて千切れたカーディガンもそのままに部屋から飛び出して、追いかけてくることを恐れながら何度も振り返っては走った。
鞄も何もかもあの部屋に置いてきて、街の中で呆然とする。持ち物はポケットに入ったスマホだけ。
目の前が真っ暗になる。小説のような一説は本当に私の身に起こっていた。
｢馬鹿は私の方だ｣
往来の真ん中でぽつりと零れたのはそんな一言。
ジョングクの呆れたような顔と言葉がぐるぐると駆け巡る。
私は単純にしか物事を考えていなかった。まだ高校一年の子供だと思っていたし、自分がまさかそういう――生物としての女と見られているだなんて実感がなかった。
四回目のデート。恋愛。彼氏。男の人にとって、これがああいうことを意味するだなんて思ってもいなかった。
――私は馬鹿だ。
くるりと振り返って、追いかけてこないことを何度も確かめているのが不安でしょうがない。
震える手で電話を掛ける相手は、無意識にもジョングクだった。
今はバイト中で、ジョングクは最初からこうなることを予感していて、信用もないし、馬鹿にされている。
分かっていても、私は何故かジョングクを選んだ。
馬鹿にされてもいいし、やっぱりこうなったでしょとか、こういうことになりたかったんでしょとか、何を言われても構わない。ただ、ジョングクの声が聞きたいと思った。
｢――A？｣
電話が繋がって、ジョングクの声が聴こえる。背後からはざわざわとしたバイト先のいつもの日常が聞こえてきた。
その音にどうしようもなく安心して、堪えていた涙がじわっと溢れてくる。震えている手がやけに鬱陶しい。
｢ジョングク｣
｢なに？ 今俺忙しいから……｣
｢ジョングクの言った通りだった｣
電話越しのジョングクがはっと黙る。私はとうとう啜り泣いた。
｢馬鹿は私の方だったよ……っ！｣
口を開いたら、もう泣き出すのが止められなかった。堰を切ったように涙が溢れて、往来の真ん中だというのに声を上げて私は泣く。
道行く人達が驚いた表情で私を振り返るけど、私は泣き止むことは出来なかった。
｢とりあえず、今すぐ電車に乗ってこっちに来て｣
｢財布も全部、置いてきちゃった｣
｢タクシーでもなんでもいいから！｣
それから、私が言われるがままにタクシーを拾ってからも、ジョングクはずっと電話を切らなかった。
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おけ(プロフ) - ここまで1日で読みました‼︎このお話大好きです！応援してます！ (2022年2月8日 23時) (
レス) @page40 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - はるさん» ありがとうございます〜！デビュー当時辺りを想像して書いてました 楽しんでもらえて良かったです！また気が向いたら続きも書くので、よろしくお願いします^^* (2020年2月7日 9時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
はる - ひゃ〜〜この作品は大好きで何度も読み直しているので、新しいお話嬉しかったです！なんとも守ってあげたくなるまだまだあやふやなグク、、主人公ちゃんと出会って、お互いを好きになれて本当に良かったなと思いました！これからも応援しております！ (2020年1月29日 2時) (レス) id: 75eff8e160 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - じみちむさん» ありがとうございます´`* ちょいちょい書き足していきますので、また読んでください〜！ (2019年8月29日 22時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
じみちむ(プロフ) - 番外編も最高でした♪( ´▽｀) (2019年8月26日 17時) (レス) id: f91208f58d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年6月9日 16時
