【銀魂】その男、獣につき

41. ページ43

　
　
　



　
「副長に用事?」

「あ、はい...!! 報告書を渡しに...」

「あー...、俺が渡しとくよ」


　
　

　






山崎の申し出に初めは戸惑う隊士だったが、受け取ろうと手を出されては断ることも出来ない。
申し訳ない気持ちになりつつも「お願いします」と書類を渡した。



　
　







「(あーぁ...やだな......)」

　
　









山崎としても副長室へは行きたくないのだ。
それは長く真選組に籍を置いているからこそよく知っている。



　
　






「万事屋の旦那も鋭いなぁ」






　
　


土方を"獣"と呼んだのは沖田も山崎も分かっている。
しかし、山崎が引っ掛かっているのはそこではない。






　




『とう、しろさ...ん』




　
　
　
　




部屋の中から微かに聞こえる女の声。
山崎じゃなくてもそれがAの声であるとすぐ分かる。





今、襖を開けては土方に切腹を命じられることも。
そっと隙間を作り覗き込む。





中では土方が彼女に覆い被さるように抱き締め、Aもまた腕を回しているのが見えた。



　
　
　






「(…分かっては居たけど…、本当に喰われてるな)」





　
　





"獣"は"獲物"に夢中だ。





仕方ない、出直してこよう。
そう思った時、視線を感じた。


　
　








「.........!!」






『(しー...)』


　
　







女は土方の頭を己の方へと抱き寄せ、残った手で口元に人差し指を持ってきた。
そして山崎の方を見て「内緒」のジェスチャーをするのだ。


　




ゾッとした。


　
　









「は......はは...、」





　






山崎は青ざめた顔で乾いた笑いを零す。



真選組という組織の中で"獣"を飼い慣らす者がいる。
きっとそれは万事屋だって知らないだろう。

　
　









「(参ったな...)」



　
　







数歩後退り、副長室の扉から距離を置く。
預かった書類を持ったまま踵を返して足早に部屋から離れた。



　







「副長が"獣"なら、あの人は......」









　


その女、猛獣使いにつき___









　


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