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「なぁ、Aちゃん」



今日の分の講義を終え、荷物をまとめていた私を呼んだのは治くんだ。

彼はもう帰る準備を済ませているのか、すでにリュックを背負っていた。



「どうしたの」
「メシ食い行かへん?」
「ご飯?」



私はちょっとだけ眉間にしわを寄せてしまった。


少食の私は、外食があまり好きではないのだ。


治くんはいやあ、と頭を掻きながら、私に言う。



「あんまりゼミの人にミスターコンのこと言いたなかったんやけど、ミスターコン用のアカウント作ったらあっという間にバレてもうたから」
「そりゃあそうでしょ、私は知らなかったけど。え、……で?」



それが私とご飯に行くこととどう関係があるのだろうか。



「やから開き直ります。Aちゃん、なんかこう、映えそうなメシの店を教えてください」
「はぁ、」



私に向かってまるで運動部のように彼はピシッと頭を下げる。

そうされると何だか調子が狂いそうだ。


それは別に私じゃなくてもいいのではないだろうか。

外食が苦手な私が、治くんのお気に召すようないいお店なんて提案できるだろうか。


例えばそう、同じサークルの人とか、そういうのに詳しい人はきっと彼の周りにもいるだろうに。



「なんで私なの」
「それは……ほら、ゼミ同期として? 仲良くしたいっていうか?」
「ゼミ同期としてはもう十分親睦深まってると思いませんか」
「俺のおごりでええから! なんかええとこ!」



そう迫る彼の勢いに、負けた。

私は前々からちょっと気になるなあと思っていた店をたくさんメモしていたメモアプリを開いた。


映えそうなところ、かあ。


大方写真を撮ってミスターコン用のアカウントに投下するのだろう。

少し考えてから、私はスクロールする手を止めた。



「治くん、オムライスは好き?」
「おう、メシなら何でも好きやで」



彼らしいその返答に安心しつつ、私はじゃあ行こうかとトートバッグを肩にかけた。


外食はあまり気乗りしないけど、治くんとならまあいいか、と。そう思った。

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(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます!よかったです!!! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです!最後までお付き合いいただきありがとうございました(;;)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました!!笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます!お疲れ様でした!そして、書いて下さりありがとうございました!次回作も楽しみにしています!! (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました! (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2018年11月4日 17時

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