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その言葉で、ツムさんの半ば不審者じみた格好の意味が分かった。
今ツムさんが普通にうろうろしていたら、そりゃあサプライズの意味もなくなってしまうわけだ。
「ここで油売ってる暇はあるの」
時計はもう四時を指している。あと三十分もすればミスターミスの企画ステージは始まってしまうだろうに。
「ああ、ええねん俺途中で乱入するだけやから」
「関西人怖いなあ」
そんなことをぼやきながら、二人でなんとなく歩き出す。大量の前売り券がある旨を伝えたら嬉しそうにしていた。
とりあえずめぼしいものを引き替えてからベンチに座った私たちは、どれをどう食べるかで少しだけ悩んだ。結局私は甘味ばかりを食べることになりそうだ。
あの屋台関西人おったから信用できるで、なんて言って手に取ったたこ焼きを頬張ったツムさんが、私の浴衣を指して言った。
「……で、Aちゃん、治には見せたん、それ」
「いや、今日は会ってないけど」
「はぁ!? 会ってへんの!?」
「どういう顔していいかわかんないし、嫌われたかもしれないし、」
「なんでやねん!」
たこ焼きをどこかに飛ばしそうな勢いで、ツムさんが言う。本場のなんでやねんだ。
もしかして、この前の一件で少し気まずくなったことを知らないのだろうか。
「……治くん、この前野菜持って帰ってきたときなんか言ってた?」
私が聞けば、彼はたこ焼きをもぐもぐと咀嚼しながらあごに手を当てて考え始める。
「ああ、なんか言ってた気がするわ」
「やっぱり、」
「……最近アイツ面白いと思ったらやっぱAちゃん関連やったか」
「えっ、どういう」
私関連で? 治くんが面白くなる? 全く分からない。いよいよ謎めいてきた事態が飲み込めないまま、私は可愛く飾り付けられたチョコバナナをかじる。
「まあええやろ、そろそろステージ始まるし、見に行くで!」
空になったたこ焼きのトレイを閉じたツムさんは、立ち上がって私の手首を引く。
ステージの方に連行されながらも、浴衣の私に歩幅を合わせてくれるあたりに女慣れしてるのかと妙な邪推をしてしまった。
不審者のようないでたちのツムさんと浴衣姿の私はなかなかに人目を引いているような気がするが、彼は全く気にしていないらしい。他大生のくせにまっすぐと屋外のステージの前に私を引っ張ったツムさんは、最前列の良い感じの場所を陣取る。
パイプ椅子に二人並んで腰を下ろした。
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雛(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます!よかったです!!! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです!最後までお付き合いいただきありがとうございました(;;)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました!!笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます!お疲れ様でした!そして、書いて下さりありがとうございました!次回作も楽しみにしています!! (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました! (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2018年11月4日 17時