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不幸中の幸いだったのは、夏休みが明けてから立て続けにゼミ単位の講義が休講になったことだ。
学部単位の必修なら、人も多いし治くんと話すこともない。
後期が始まって最初の週はとりあえず面と向かって顔を合わせることはなかった。意識して避けていたのもあったけど。
きっと今日からの学祭だって、彼はサークルやミスターコンでてんてこまいだろうし、もともと誘うつもりでもなかったわけで。
「永岡先輩、手伝ってもらっていいんですか？」
「暇だし、ぜんっぜんいいのよ」
そんなことを言いながら、ちょっと申し訳なさそうな顔をする後輩の腰ひもをキュッと締める。
大規模な学祭だが、さすがに三回目ともなれば、出し物を回ることにうきうきすることもない。そう思った私は、引退したサークルが開いているカフェに居座ることに決めた。
女子は浴衣、男子はスラックスで接客するらしいということで、私は部室で後輩女子の浴衣を着付ける手伝いくらいならできるかと、朝一番で部室にやってきている。
「苦しかったら教えて」
そう言いながらおはしょりを綺麗に伸ばしてから、さらに腰ひもを巻き付けていく。
私以外にも着付けのできる後輩が数人いて、目張りのされた部室の中でそれぞれが思い思いに話に花を咲かせていた。
一人だけ老害が混ざってごめんなあ、なんてちょっと間抜けな感想を抱きつつも、どうせこうでもしなければ学祭に行かずに引きこもるだろうしと自分を正当化してみる。
その割には文庫結びしかできないのはまあ許してね、なんて。
くるくると帯を巻き付けていたら、急に後輩が爆弾を落としてきた。
「そういえば永岡先輩、今年のミスター誰推してます？」
「えっ、」
何ともタイミングの悪い質問に、思わず手が止まる。きっと彼女も悪気はないのだろう。
だってミスターもミスも学祭二日目に決まるわけだし、一日目もなにか候補者のステージがあるはずだし。
ただ、私が治くんと珍妙な拗らせ方をしたせいで、どういう顔をして次会えばいいのかわからないってだけで。
「宮治くん、ゼミがおんなじだからさ」
「えっ！ マジですかそれ！」
「えー先輩羨ましい！」
そんな声が部室のあちこちから聞こえた。ミスターミスに関心があるのは誰だってそうらしい。
特に大学に上がって初めての学祭になる一年生なんかは目をキラキラと輝かせていた。まあ私と治くんが同じゼミなのは本当にたまたまなんだけど。
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雛(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます！よかったです！！！ (2018年12月24日 18時) (
レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです！最後までお付き合いいただきありがとうございました(；；)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います！ (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました！！笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます！お疲れ様でした！そして、書いて下さりありがとうございました！次回作も楽しみにしています！！ (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました！ (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛
| 作者ホームページ：https://twitter.com/pp__synd
作成日時：2018年11月4日 17時
