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──うわあ、本当に来ちゃった、治くん。


マンションのエントランスを開けたら、次はうちだ。
エプロンをつけたままぱたぱたと姿見の前に走り、そういえば私の恰好はへんじゃないかとか慌てて確認していたら、すぐにインターホンが鳴る。


「はーい……」


恐る恐るドアを開けたら、治くんが立っていた。いや、当たり前なんだけど、なんていうか、こう。


「あがってあがって」
「おじゃましまーす」


声は上擦ってなかっただろうか。
自分の家に好きな人を呼ぶだなんて、本当にこの立場でもない限りなかっただろう。
ありがたくそれを享受しながら、8畳1Kの部屋の中を見回す治くんの背中を追う。


「シンプルな部屋やなあ」
「そう?」


まあものは多くないとは思うけれど、どうだろう。
あまりじろじろと見られると恥ずかしい。


「なんやこれ、花?」
「うん、そうだよ」


壁にぶら下がったドライフラワーをしげしげと見つめる彼に声をかける。


「荷物は適当に置いてもらっていいから」
「おん」
「もう少し時間かかると思うから、適当に待っててほしい」
「何か手伝うことはないんか」
「うん、ありがとう」


部屋の隅にリュックを下ろした治くんは、壁のドライフラワーから離れたかと思うと、今度は本棚の前に立つ。
私よりも背の高い本棚だが、治くんと比べると少し小さいくらいだ。


「……治くん、身長いくつなの」
「三年上がったときの健康診断やったら、186やな」
「でかいなあ」


前々から大きいとは思っていた。
168センチある私がヒールを履いてもちっとも届かないのだから。
それでも改めて数字として聞くと、どうにも変な感じだ。


火を止めてルーを割り入れ、くるくると混ぜながら溶かしていく。
再びカレーを煮込み始めてから、レンジでふかしておいたジャガイモをボウルに移し木べらでつぶした。


「Aちゃん、明治文豪とか読むんか」


リビングから飛んできたそんな質問に、自分が本棚の中に何を置いていたか思い出す。


「結構好きだね、私は」
「ふうん……タイトルしか知らんようなやつばっかりやなあ」


積読も結構多いことは……まあ、黙っておこうか。お玉でゆっくりと鍋をかきまわしながら、私の本棚を見つめる彼の横顔を見つめた。
1Kの一人暮らし用の狭い家だと、キッチンから横を見るだけでリビングの様子が見えてしまう。

そんな狭い私の居住スペースが背景というだけで、いつも通りの治くんがまるで違って見えた。

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(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます!よかったです!!! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです!最後までお付き合いいただきありがとうございました(;;)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました!!笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます!お疲れ様でした!そして、書いて下さりありがとうございました!次回作も楽しみにしています!! (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました! (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2018年11月4日 17時

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