【銀魂】高杉さんに閉じ込められた世界でのお話

五十八 ページ13

「おい山崎。」

「たっ隊長！？」

白昼堂々、野崎さんの後をつける俺は、道端の電柱の陰に隠れていた。些細な物音すら立てないようにと細心の注意を払っているこちらのことなど、お構いなしなようで。隊長は彼女に聞こえてしまいそうな声量で声をかけてきたのだ。

もちろん尾行は業務の範囲内である。
周囲に気を配っている俺ですら、隊長の接近に気づくことはできなかった。ほんと、気配を消して近づくのはやめていただきたい。


「で、様子はどうでィ。」

「特に変わりないですね。....本当に彼女ってそんなやばい人なんですか？」

「さーな。まあ人は見た目で判断しちゃいけねぇっていうだろィ。」


脱出の任務から二か月、突然下った野崎A監視の命。
以前にもまして危うげな雰囲気を増した彼女は、万事屋の建物から姿を現した。真選組幹部しか詳細は知らされていないため、俺は推測することしかできないけれど、とにかく複雑な事情の持ち主らしかった。

なぜか今は俺の監視付きで旦那のところに居候しているんだとか。


「それにしてもほんとに高杉は現れるんですかね。攘夷浪士が動くほどの価値がある風にはほんと、見えないんですよ....。」

「奴らの事情何て俺ァ知らねーよ。」


大方見廻りの途中に暇を持て余してちょっかいかけにきた、といった感じだろう。いまいち何がしたいのかわからない隊長にため息を漏らしながらも、正面に向き直る。
すると、


「あれっ！？野崎さんは！？」

「あーれら。見失っちまった。」


いったい誰のせいだと思ってるんだ。
ひくつく目元とともに野崎さんの姿のない通りを眺めるけれど、こうなってしまってはどうしようもないわけで。行きそうな場所しらみつぶしに当たるしかないか、と肩を落とした。


「何が御用ですか？」

「へ？」


沖田隊長の方に振り向けば、確かに正面の道を歩いていたはずの野崎さんが平然と立っていた。その存在に気付いていたらしい隊長は、特に何のリアクションも見せない。
.....どうやって移動した？

混乱する俺を見て楽しむ隊長と、その脇で一点の曇りもないまなざしを向けてくる野崎さん。

対照的な二人を前にして、驚きよりも先に呆れが本日二度目のため息となって零れ落ちた。


「隊長さんもおそろいで。どうなされたんですか？」

「旦那んとこ行く条件の一つが、あんたに見張りつけることなんでさァ。」

「あら、それを山崎さんが？」


..........それ言っちゃ元も子もないでしょうよ隊長。

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