16.約束〈side TH〉 ページ16
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｢――なんで放っておいたんだ！｣
ナムジュン先輩が俺をこんなに怒鳴るのは初めてだった。いつも俺が何かをやらかしても、困った顔をしてそれから宥めてくれるのに。
でも、今回のことは全部俺が悪くて、自分でもどうしてAを放っておいたのか、後悔してもしきれなかった。
｢……どうしよう｣
泣いているAを目の前にして、どうしたらいいのか分からなくて、一人にしてと言われたからそうした。
だけど、少し経ったらまた教室に現れて、しょうがないなあって顔をしてくれると思っていた。
なのに、Aは鞄を置いてどこかに消えてしまった。
｢A、血を飲んだら泣いたんだ｣
｢彼女はまだ心は人間のままだよ｣
｢うん……分かってたつもりだったんだけど……｣
｢……お前の気持ちも分かるが、今は無事かどうかだけでも確かめないと｣
最近、この街の近辺で食屍鬼が出ているという噂は青年部にも届いていた。人間の被害者も数人から十数人へと数を増やして、剣呑ではない雰囲気が俺たちの周りにも漂っていた。
人の肉を食う人ならざる者。
俺のせいで半吸血鬼になったAは格好の標的になる。
Aは分かっていないけれど、Aの周りからは人外を引き寄せる美味しそうな匂いが漂っていたから、食屍鬼が寄ってきても疑問はない。
｢俺、Aが同じ吸血鬼になって、ほんとはちょっと嬉しかったから、だから怒ったんだと思う｣
｢……｣
ナムジュン先輩は僅かに目を伏せた。
｢永遠に近い時を孤独に過ごすのは、誰だって怖いさ。人外が自分と同じ存在を求める気持ちも分かる。お前がまだ誰かと共に暮らすことを諦められないことも、"あの時"が忘れられないこともよく分かるよ｣
でも、Aにとって、これは突然の不幸だったんだ。
そんなこと、分かってる。
あの日、Aを噛んでしまったことも、わざとではなかった。
三週間前の台風の影響で血液パックの輸送が滞って、死を覚悟するほどの空腹に絶望していた時、たまたまAがあの道を通りかかっただけ。
他の子とちょっと違う、どこか美味しそうな匂いがするクラスメイトの香りに本能が抑えられなかった。
でも、それも単なる言い訳だ。
だから、Aをちゃんと守って、いつか一緒に楽しい永遠を過ごせたらいいなって思ってたのに。
｢俺が守るって言ったから、約束も守らなきゃ……｣
……もう、"あんな思い"はしたくない。
じわじわと胃に迫り来る焦燥感に、強く唇を噛み締めた。
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sai(プロフ) - のんさん» はじめまして、コメント＆読了ありがとうございますー！ 番外編もちょいちょい書きますので、また読んでください´`* (2019年9月14日 23時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。完結してしまって…しばらく吸血鬼ロスでした。番外編嬉しいです！楽しみにしています！ (2019年9月14日 19時) (レス) id: 94dc845851 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - チョコさん» 完結までお付き合いいただいてありがとうございまーす！その後の進展(？)した二人も書きますね〜！読んでくださってありがとうございました！ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - AULA−輝きさん» ストーリーがダラダラしそうで大分（他メンのエピソードとか）色々削ったので、ぼちぼち番外編てやりたいですね〜！ジミンちゃんの今的なやつもやってみようと思います^^ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - わぁ〜！完結しましたね！今回は推しということもあり楽しませていただきました！続編、見たいです！！基本的には作者さんにお任せですがやっぱりデートシーンみたいなのはほしいです笑笑 (2019年9月10日 1時) (レス) id: 58e918a46e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年8月29日 11時
