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……けれど、そのもつかの間。
俯いたAはくすくすっと笑って、顔を上げた時にはいつもの彼。
どこか胡散臭いような笑顔のまま、楽しげに口を開く。
「……そっか、優しいかぁ。
俺、まだ個性使ってないのになぁ」
「そういう意味と違くて！
なんか前と雰囲気、微妙に違う気がして。
何となく…素朴っぽかったっていうか……」
上手く言葉が見つからなくて、お茶子は言い淀む。
精緻な美貌のミステリアスな青年。
飄々と笑っていて本心が分からないAとは、ほんの少し違うように見えたのだ。
「……ねぇ。
麗日ちゃんはどうしてヒーローになりたいの？」
「うえっ、いきなり！？ 何で！？」
「聞いてみたいなーって思ったから」
教えて教えて、とAが言う。
淡いグレーの目はまるで星の色。柔らかく緩めて、お茶子を見ている。
ほんの少しはにかみながら、お茶子も微笑んで。
休憩とばかりに、サンドイッチをひと口。
きっと、しゃきしゃきの野菜と香ばしいベーコンが美味しかったせいだ。
「究極的に言えば、お金のためで」
「……！ へぇ、意外だね」
「ウチね、建設会社やってるんだけど……全っ然仕事なくてスカンピンなの。
それでも私の夢を叶えてくれた方が嬉しいって父に言われちゃって、だから、」
だからね、とお茶子は続ける。
これを話すのは2回目。
お茶子の決意は変わらない。
すべきことだって、変わらない。
「私、絶対ヒーローになってお金稼いで、
父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ！」
栗色の瞳に、夏の太陽を輝かせ。
サンドイッチを持っていない方の手で拳をつくって、微笑むお茶子。
いつの間にか食べ終わっていたサンドイッチの梱包紙を綺麗に折りたたみながら、Aはそっか、とひとりごちた。
「素敵な夢だね、麗日ちゃん」
不意に、ベンチから立ち上がるA。
お茶子と向き合えば、飄々とした笑顔。
けれどどこか寂しそうな……
そうも見える、切なげで、淡い表情。
咄嗟のことに、お茶子は身体が動かない。
彼はお茶子と向き合うと、額と額が触れる距離まで近づいて――…
「……ここ、パンくずついてる」
肝が座ってるね。
瞬きもしないなんて。
彼はそう囁き、微笑んだ。
「体育祭も頑張って。
俺も見に行く。応援してるよ」
じゃあね、とAが手を振る。
はっと正気に戻ったお茶子が「いやいやいや、来たらアカンよ！？」と彼の背に叫んだのは、それから約10秒後。
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るいるい＊*(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます！ 嬉しいですvV (2019年5月29日 21時) (
レス) id: ffc7d791fa (このIDを非表示/違反報告)
カイ - お茶子も主人公も両方可愛い！ (2019年5月29日 20時) (レス) id: 2843dfb22b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 猫好きさん» 健全な占ツクでその話題はいけない…(戒め) (2019年5月24日 8時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - 野獣せんぱ……すみません (2019年5月24日 0時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 祟璃さん» うわぁあ人名のミスとかいちばんやっちゃいけない誤字！ ありがとうございます！本当に助かります！ 修正致しました！ (2019年5月20日 10時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るいるい＊* | 作成日時：2019年5月12日 14時
