44:潮騒に、ぽつり ページ46
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もしかして、あまり良くない状況なのだろうか。
冷静になったお茶子は、ペットボトルホルダーに付けていた『あるもの』に頼る。
「ぼ、防犯ブザー!」
「まあまあ、そんなに慌てないで。
そんなものに頼らずにさ、もう少し話そうよ」
「えっ、ない! いつの間に!?」
だが『あるもの』……相澤特性防犯ブザーは、いつの間にか奪われていた。
というかAの手の中にあった。
そうだ。この人は気配を消すのが上手いのだ。
おそらくだが、USJ襲撃のときもそうだ。
彼は尾白のいた火災エリアからゲート前の高台まで移動したと思われるのだが、そのことに気づいた人間は誰もいなかった。
ヴィランたちが退散するときも、プロヒーローたちの攻撃に乗じて、紛れ込むようにワープゲートへ飛び込んでいったらしい。
何ともまあ、逃げ足が早いヤツだ。
「ななな、何でここにおるん!?」
「元々ここは俺のお気に入りの場所だからね。
基本暇なんだ。学校行ってないから」
「えっ!?」
「よその学校へ元気に通ってたら、間違ってもUSJに遊びに行ったりしないでしょ」
「そ、それもそっか……」
一定の距離を保ちつつ、謎の雑談。
Aの情報をひとつ手に入れたわけだが、冷静に考えれば分かることである。
警戒心はあるものの……
Aの様子を見る限り、今日の遭遇は本当に偶然らしい。
昼食にする予定だったのか、駅前のサンドイッチの紙袋が隣に置いてある。
それを狙っているのか、微妙に集まるカモメたち。
……本当に信用してもいいのだろうかと、お茶子が気を許しかけたその矢先、
「それにしても。
正直、君のガッツは想像以上だったな。
俺、結構頑張ったつもりだったんだけどね」
悪びれた気配もない。
それを特別に感じている様子もない。
そんなふうにUSJの件を話すAは、あいもかわらず、飄々と。
ただ世間話のひとつとでもいうように、けろりと言ってのけたのである。
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るいるい**(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます! 嬉しいですvV (2019年5月29日 21時) (レス) id: ffc7d791fa (このIDを非表示/違反報告)
カイ - お茶子も主人公も両方可愛い! (2019年5月29日 20時) (レス) id: 2843dfb22b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい**(プロフ) - 猫好きさん» 健全な占ツクでその話題はいけない…(戒め) (2019年5月24日 8時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - 野獣せんぱ……すみません (2019年5月24日 0時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい**(プロフ) - 祟璃さん» うわぁあ人名のミスとかいちばんやっちゃいけない誤字! ありがとうございます!本当に助かります! 修正致しました! (2019年5月20日 10時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るいるい** | 作成日時:2019年5月12日 14時