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けれど、誤算がひとつ。
お茶子の想定よりもAの反射神経はバケモノだった。
Aはお茶子が触れると同時に、お茶子の肩を掴み。
……彼女が個性を発動させるのと同時に、近距離でフェロモンを放ったのだ。
膝をつくお茶子。
中途半端に宙に浮き、自由を奪われたA。
「すごいなぁ、麗日ちゃんは！
……いいや、俺の後輩たちはみんな素晴らしい！
相澤先生が目をかけるだけあって……輝いている！」
お茶子が公園で見た笑顔でも。
襲撃時に見せた笑顔でもない。
長い睫毛で繊細に彩られた瞳を大きく見開き。
淡いその色を嗜虐と、加虐の色に染めて。
精緻なパーツをぶち壊すがごとく、Aは嗤っていた。
「でも、なめられちゃ困るね？
だって俺は君達の『先輩』なのだから！」
大きく、深呼吸をするA。
ぐっと目を見開くが、声色は穏やかだ。
まるで恋人に囁くような甘さで、彼は微笑む。
「君の個性は無重力かな？
正規の解除方法は分からないけれど……個性っていうのは大体、かけた本人の意識が飛べば解除されるんだよ」
脳内に直接、響くように囁かれた言葉。
とろんと流れ込み、脳髄を撫でて痺れさせる。
きっとこれが『虜』になる感覚。
本能が、これに従えとざわめきはじめる。
「……いいんだよ、麗日ちゃん。
君も楽になっちゃえばいい。
目を閉じて…ほら、身を委ねて……ね？」
けれど、お茶子は粘りつづける。
理性を保たんと、耐え続ける。
ふわふわと甘く、どろどろと怖ろしい誘惑。
どこまでも魅力的な絶望に、屈しないと戦い続ける。
限界など超えている。
ここまで耐えているのが奇跡なぐらいだ。
膝をついて。肘をついて。肩を上下させて。
崩れ落ちる寸前だが、お茶子は何とか、意識を保つ。
理性を持って行かれないように、血が出るほど歯を食い縛って。
皮膚がちぎれるほど、爪を手のひらに食い込ませて。
「まったく、君は本当に――…」
Aもまた、限界が近づいているのか。
明らかに顔色が悪いが、不思議と穏やかな表情で。
そのまま何かをひとりごちたが、聞こえない。
何も聞こえず、見えなくなって……
――お茶子の意識は、そこで落ちた。
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るいるい＊*(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます！ 嬉しいですvV (2019年5月29日 21時) (
レス) id: ffc7d791fa (このIDを非表示/違反報告)
カイ - お茶子も主人公も両方可愛い！ (2019年5月29日 20時) (レス) id: 2843dfb22b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 猫好きさん» 健全な占ツクでその話題はいけない…(戒め) (2019年5月24日 8時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - 野獣せんぱ……すみません (2019年5月24日 0時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 祟璃さん» うわぁあ人名のミスとかいちばんやっちゃいけない誤字！ ありがとうございます！本当に助かります！ 修正致しました！ (2019年5月20日 10時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るいるい＊* | 作成日時：2019年5月12日 14時
