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真っ先に吠えたのは芦戸三奈だった。
彼女は心優しい少女だ。
情緒的で明るい、クラスの盛り上げ役。
「それって、尾白のこと！？
アンタ、尾白になにしたの！？」
そんな彼女が泣いている。
大きな瞳に涙を溜めて、ぽろぽろ零しながら、叫んでいる。
悲痛な声だ。美しい涙だ。
けれどAは、表情を変えたりしなかった。
やっぱり彼は楽しげに、妖しげに微笑むのだ。
「大丈夫、酷いことはしてないよ。
俺の個性で眠ってもらっただけさ」
「こ、個性……？」
「だからね、泣かないで。
女の子は弾けるような笑顔が似合うよ」
――それは、ほんの一瞬。
尾白が重体でないことを知らされて気が緩んだ、気を緩ませてしまった……その瞬間のことだった。
黒霧がワープゲートを広げ、Aが通過する。
現れたのは三奈の前。彼女の眼前。
咄嗟のことに誰も反応できず、反応した時には手遅れだった。
「――ほら、笑って？」
子どもでもあやすような、優しい声。
その途端、少し距離のあるお茶子のところにまで届いた甘い
三奈の両頬を包んだのは、大きな手。
その手は優しく彼女の頬を撫で、涙を拭う。
接近され、頬から耳にかけてくすぐるように愛撫された三奈の表情は、とろんと……惚けたように緩んでいて。
間違いない。Aの個性だ。
お茶子にはその香りに覚えがある。
自分も一度嗅いだことのある、世界でいちばん甘いんじゃないかと錯覚する、あの匂い。
「……っ、三奈ちゃん！」
個性を浴びた三奈が名前の腕で崩れ落ちるより先に、お茶子は動く。
咄嗟に掴んだのは三奈の腕。
腰砕けになった彼女を必死で引き戻すと、その意図を察した障子が複製腕で補助する。
……おかげで、お茶子も三奈も倒れずに済んだ。
良かった。ひとまずは、良かった。
けれどやることは山ほどある。
お茶子だけができることも、たくさん。
「あのひと、知ってる！」
声を張り上げ、伝えなければ。
彼の個性を。危険性を。
「あの匂い、嗅いだら動けんくなる！
近づいちゃだめ、逃げて！」
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るいるい＊*(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます！ 嬉しいですvV (2019年5月29日 21時) (
レス) id: ffc7d791fa (このIDを非表示/違反報告)
カイ - お茶子も主人公も両方可愛い！ (2019年5月29日 20時) (レス) id: 2843dfb22b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 猫好きさん» 健全な占ツクでその話題はいけない…(戒め) (2019年5月24日 8時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - 野獣せんぱ……すみません (2019年5月24日 0時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 祟璃さん» うわぁあ人名のミスとかいちばんやっちゃいけない誤字！ ありがとうございます！本当に助かります！ 修正致しました！ (2019年5月20日 10時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るいるい＊* | 作成日時：2019年5月12日 14時
