【不死川実弥】風柱、少女を拾う。

じゅうさん ページ13

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Aが目を覚ました時には、既に三人はいなくなっていた。
その代わりに、彼女の傍らにはそっとAの髪を梳いている不死川の姿がある。


「さねみ！」


いつもは寝起きの悪いAも、彼の姿を見るなり直ぐに起き上がった。
そして、不死川の胸の中に飛び込む。


「帰ってきたぞォ、A」


「さねみ！」


グリグリと自分の胸板に頭を擦り付けるAを、そっと抱きしめ返す。

不死川は、自分に大切なものが増えてしまったなァと、少女の頭を愛おしげに撫でた。

すると、うっすらと血の匂いがする隊服に顔を埋め、Aは安心したように再び寝息を立て始める。



「よく寝るなァ、お前。飯も沢山食うよなァ」



きっとそれは、彼女の家族が今までにきちんとした食事をさせなかったせいもあるのだろう。


任務終わりにお館様の話を聞いてきた実弥は、自分の腕の中で眠る少女の生い立ちを思った。




小さな頃から、良家の息子の許嫁として育てられたA。

しかし何かしらの精神的なショックで、言葉を話すことだけでなく、理解すらできなくなり、その婚約は破棄されたのだという。



『あの子の本当の名前は、椿なんだ。でも今は、Aと呼んであげた方が良いのかもしれないね』






そんなお館様の言葉を思い出しながら、「A」と不死川は呟く。


一方Aは、幸せそうな笑みを浮かべていた。





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