アラニュエの森 (ページ38)

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「ついでですから、私が対応しますよ。学生課の担当ですから」

あー、と目を泳がせたサト。

正直に言うと、サトはタツ先生のことを苦手としていた。

自分が学生だった頃から先生をしている、サトもタツ先生に教わっていたくらいの、大ベテランの先生だ。

学生時代を知られている相手と話すのは、やはり気まずい。

「それとも、私じゃない方がいいですか？」
「いえ！大丈夫です！」

慌てて椅子に座った。

「箒は床に」
「すいません」

手に持ったままの箒を、やっと床に置いた。

どうもタツ先生と話していると、自分が学生に戻ったような感じがする。

「それで、マサと言ってましたね……まだサト先生が保護されてるんですか？」

タツ先生が振り返ると、壁にあった棚が開き、小さな冊子が飛んできた。

表紙を見れば『三年生マサ』と書いてある。

学生の記録が残っている冊子だ。

「はい。マサの親御さんから手紙が届いたりするんですけど、それを見る限りはまだ帰せないかな、と」
「その手紙は？」

ポケットから手紙を取り出し、タツ先生に渡した。

「どうしてこんなにぐしゃぐしゃにするんですか」
「すいません」

頭を掻いたサト。

ぐしゃぐしゃにするつもりはなかったのだから、仕方ない。

「……なるほど、マサは三年生ですしね。このあとどうするか、というところですか」

手紙を読んで、ふむ、と顎に手を当てたタツ先生。

「そういうことです。マサは学園に通い続けたいって言ってますし、俺としてもそのくらいどうにでもできるんですが」
「俺」
「あ……私、です。はい」

そうだった、とまたサトは苦笑する。

タツ先生は言葉遣いにも厳しい。

先生であるならば、「俺」ではなく「私」と言いなさい、と何度注意されたことか。

それでも普段は「僕」で、学園では「俺」と決めているため、「私」は出てこずに毎回注意されている。

「そうですね、マサは優秀な学生なんですけど……科目によってばらつきがある、と言いますか」

じとっとした目で見られ、サトはあはは、と顔をひきつらせる。

「特に水魔法と風魔法が得意なようですが、マサは元々風魔法属性の魔力を持っていますよね？どうして水魔法も同じレベルまで上がっているんでしょう？」
「それは……マサが努力したんじゃないでしょうか……」

苦笑しながら返すと、タツ先生はため息をついた。