アラニュエの森 (ページ31)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:91,410 hit

＊3 ページ31

「二宮ってそんな本も持ってたの？櫻井さんのかなあって思い始めたところだったわ」

松本が二宮の顔を見る。

そのまま二宮になんとなく本を手渡した。

「櫻井さんも持ってるんじゃない？中性子星は私も興味がありましてね。櫻井さんに話をいろいろ聞いたこともあるので」

中身をパラパラとめくり、パタンと本を閉じた二宮。

「それにしても、松本が起きてて櫻井さんが寝てるのなんて珍しい」
「……いつも起きるの遅くて悪かったな」

苦笑したサトは、ご飯の準備をすることにした。

気づいたマサも手伝おうと台所に向かう。

「あぁ、いいよ。僕も眠いからさ、魔法でさっさと作っちゃう」
「そう？サトちゃんも珍しいね」

何を作るか考えて、台所全体に魔法をかければ、勝手に物が動いてご飯を作り始める。

その音に、二宮と松本が振り返った。

「わ、そんなこともできるんですか」

二宮は目を丸くしている。

ここまで大きな魔法を使ったのは、二人の前では初めてかもしれない。

「うん、ちょっと僕も徹夜しちゃったから……サクもかなり遅くに寝てたし、起こさないであげてね」

ふわあ、とサトはあくびをする。

「徹夜？」
「うん。サクにいろいろ聞いてたの。電気とか、酸素とか、太陽系とか」

へえ、と松本が目を丸くした。

二人にとっては馴染みのある言葉だろう。

「サトってそういうのも興味あるの？」
「興味があるっていうか……マツたちの惑星と、僕たちの惑星って、たぶん結構違うんでしょ？違いがあるなら気になるじゃん」

そう答えると、二宮が苦笑した。

「サトのこと、研究者には見えなかったけど……そういうのを聞くと、研究者だなあって思うわ」

サトは二宮の顔を見て、首を傾げた。

どういう意味なのだろう。

「あ、悪い意味じゃないんで安心してください。いい意味ですよ」

肩をすくめた二宮は、松本と一緒に本の分類に入った。

「白色矮星は？これ誰の本？」
「それは俺っすね。その下の超新星爆発は櫻井さんのだと思います」

じとっとした目で二宮を見る松本。

「お前、ややこしい本持つなよ」
「そんなこと言われる筋合いはないわ、研究に必要だから持ってるだけで」
「白色矮星の専門だったか？」
「俺の専門はブラックホール！」

仲がいいのか悪いのか、よく分からない。

苦笑したサト。

二宮が私と言ったり俺と言ったりしているため、本来は仲良しなのだろう。