アラニュエの森 (ページ28)

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「電気ってのは、流れるものなの。電気が流れることを電流っていうのね。これは、その電気を流す源なの。だから電源っていうんだけど」

難しそうな顔をしたサト。

電気という概念がそもそもないとしたら、かなり理解しにくい話なのかもしれない。

「電気を流す源がその電源っていうやつなの？じゃあ、電源があったらずっと電気は流れる？」
「って言いたいじゃん？電気も無限にあるわけじゃなくてね、発電しないとなくなっちゃうんだよ」

うーん、と腕を組んだ櫻井。

どちらかと言えば、こういうのが得意なのは二宮だ。

「へえ……魔力とはまた違うんだね」

またじっと予備電源を見るサト。

櫻井はパネルを操作して、宇宙船全体の損傷箇所がないかどうか調べるように指示を出す。

少なくとも主要な電気系統が動くことは分かったため、ある程度のスキャンもできるはずだ。

結果が出るまでの時間、宇宙船の中を歩き回った。

多少物が崩れたりはしているが、ぐしゃぐしゃになっている、というところまではいっていない。

載せていた本なども無事で、そのまま残っている。

松本が実験で育てていた植物は枯れていた。

ピピ、という音が鳴ったため、櫻井はパネルの元へ戻る。

サトは今度はパネルを眺めていた。

「あちゃー……」

表示された結果を見て、櫻井は顔をしかめる。

「何かわかったの？」

画面に出てきた文字がサトには読めないようだ。

この惑星の文字を櫻井が読むことができないのと同じだ。

「エンジンが壊れてる。あと空気循環と水再利用もダメ……このままだとこの船は使えないね」

電気系統は動いていても、肝心なものが壊れている。

「通信は……送受信どっちもダメだな。現在位置も不明になってる」

念のために他のものも確認してみたが、基本的にはほとんどのものが壊れてしまっている。

観測機器が完全に壊れているのも確認した。

少し考えて、櫻井は宇宙船の電源を切り、予備電源からケーブルを抜いた。

「あれ、消えた。いいの？」

サトは不思議そうに櫻井の顔を見る。

「うん。二宮と松本にも相談してみる。電気がいつまで持つか分からないから、無意味に電源入れてるのももったいないし」

宇宙船自体はそのまま残っているからマシなのだろうが、ここまで損傷が酷いとないのとほぼ同じだ。

「その辺の本だけ持って帰ろうかな。サト、これ持っていける？」
「うん。運ぶよ」

サトが近くにあった本をすべて浮かせたのを見て、櫻井は目を丸くした。